市町村合併と消防の広域化の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 09:35 UTC 版)
「消防本部」の記事における「市町村合併と消防の広域化の問題点」の解説
2000年(平成12年)以降、いわゆる平成の大合併と呼ばれる市町村合併が進んだ。 これに伴い、一部の市町村において、消防本部が管轄する区域と食い違いが生じている。 市町村が合併したが、旧来の市町村の各消防本部が残ったため、新市町村に複数の消防本部が管轄する区域が存在する場合 以前から一部事務組合による消防本部が設置されており、市町村の合併による新市町村の区域と一部事務組合の区域が合致しない場合 これらが複合している場合 新市町村に複数の消防本部の区域が存在する例としては、滋賀県東近江市(後に解消)、群馬県高崎市、広島県広島市(後に解消)・廿日市市、山口県山口市・周南市などが挙げられる。高崎市を例とすると高崎市および安中市の全域を高崎市・安中市消防組合(高崎市等広域消防局)が管轄しているが、旧吉井町区域のみは高崎市に編入した後も引き続き多野藤岡広域市町村圏振興整備組合へ加入している。一方で旧新町区域は、飛び地であるが高崎市に編入した事に合わせて多野藤岡広域市町村圏振興整備組合から高崎市・安中市消防組合へ移管された。 一部事務組合の区域が新市町村の区域と一致したケースとしては、埼玉県熊谷市などが挙げられる。熊谷市では「熊谷地区消防組合」の解散と「熊谷地区消防本部」から「熊谷市消防本部」への組織変更がスムーズに実施された。 島根県では、合併協議から離脱した簸川郡斐川町に対し、新たに合併した出雲市が常備消防を実施しないことを通告する事件も起こった(消防組合設置まで拒否するものであり、町が財政状態に関係なく独自に消防を置かねばならない)。住民の安心・安全の根幹を支える消防を盾にとった出雲市に対しては、消防庁をはじめ全国の消防関係者から非難の声が挙がる事態となった(その後2011年10月1日に合併)。 大阪府では、堺市と高石市が「堺市高石市消防組合」を設置していたが、2006年4月1日に政令指定都市に移行した堺市は、組合を解散して単独での消防組織設置を検討。これに対して、財政が悪化していた高石市は、独自の常備消防の設置や市内にある石油コンビナート火災に対応した車輌の購入が厳しい状況であったため、組合の解散に反対した。最終的には、組合解散後も堺市が事務委託により高石市内の消防事務を担うことで交渉がまとまり、2008年6月の両市議会で組合の解散が提案・可決され、同年10月に堺市消防局が発足した。 消防組合が解散して2つの消防本部に分裂したケースもある。岐阜県の北部飛騨地方に属する高山市と飛騨市の消防本部は現在両市が単独で運営しているが、もともとは飛騨消防組合消防本部(以下、同組合)という組織で成り立っていた。だが、2004年の飛騨市発足に伴い、加入していた吉城郡旧3町村が同組合から脱退。飛騨市の合併に参加した旧神岡町の消防本部を統合し飛騨市消防本部を立ち上げることとなった。これに伴い、神岡町に消防事務を委託していた吉城郡上宝村は飛騨市発足により神岡町との事務委託関係を解消させ、同組合に加入した。残った高山市、大野郡・吉城郡(上宝村を含む)の一部も2005年に合併した。合併に参加しなかった大野郡白川村は消防事務を高山市に委託し、同組合は解散した。 消防組合がもとで市町村合併が破談になったケースもある。長崎県西彼杵郡時津町・長与町・琴海町の3町は琴の海市として合併する予定であったが、長崎市(長崎市消防局)に委託している消防事務を琴の海市で発足させる際、3町は合併後の発足始動を前提に当面の間長崎市への委託継続を要求したが、長崎市は合併までに発足させることを要求したため、3町の合併が困難となり協議会も解散した。 一度広域合併した消防組合が解散したケースとしては、鹿児島県南薩広域消防組合のケースがある。枕崎地区消防組合と加世田地区消防組合が合併して南薩広域消防組合を発足させたが、県などの思惑は指宿地区消防組合も含めた広域合併を計画していた。しかし、通信指令室の新規整備計画の意見の相違から組合解散となり、最終的に旧加世田地区消防組合は南さつま市消防本部として単独消防を開始、枕崎市は枕崎市消防本部として単独消防を開始、枕崎地区消防組合に加盟していた南九州市の旧川辺町と旧知覧町の地域は同じ町の頴娃地区が指宿地区消防組合に加盟していたこともあり同一市町で消防が二つに分かれるのは行政的にも支障があるとして指宿市と共同で指宿南九州消防組合を設立した。
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