巣のあり方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 15:14 UTC 版)
※以下の文に登場する学名の一部に関しては Govaerts, R., Goyder, D. & Leeuwenberg, A. (2021). World Checklist of Apocynaceae. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; https://wcsp.science.kew.org/ Retrieved 6 November 2021 を参照。 巣になる部位は植物によって様々である。外見的にはわからない場合から、大きくふくらんでよく目立つ例まである。いずれにせよ、それらはアリがそれを作るものではなく、また虫こぶのように虫の影響で植物が変形するものでもなく、アリが存在しない段階から植物が自発的に形成する。ただし出入り口はアリが自ら作るものもある。なお、アリの巣の位置は地上部であり、地下ではない。 茎を利用する代表的なものにイラクサ科のセクロピア Cecropia がある。この植物では節を持つ茎の内部は竹のように仕切によって分割された空洞になっている。女王アリはその壁に穴を空けて内部に侵入し、そこを巣として利用する。この植物では外見的には普通の茎と大差ない。 匍匐茎を巣にする例もある。シダ植物のエゾデンダ属 Polypodium のものは樹皮上に細長い匍匐茎を伸ばす着生植物で、そのあちこちから葉をつける。マレーシアの P. sinuosum の匍匐茎は外見的には他の種とさほど変わらない棒状のものだが、内部は空洞になっており、ここにアリが入る。同じくウラボシ科の Lecanopterisでは、同科の他のシダのように匍匐茎が棒状や円柱状ではなく、円盤状に広がってふくらみ、でこぼこの多い餅のような外見をしており、内部には多数の空洞がある。 アカネ科の着生植物であるアリノスダマ Hydnophytum の場合、樹木に着生する茎の茎の基部が大きくふくらんでその内部に迷路状の空洞があり、これにアリが住み着くが、この部位は茎ではなく、胚軸の下部に相当するという。 托葉が巣になる例として、アカシアの1種であるアリアカシア類ではそれが丸くふくらんで先端が棘となっている。その内部が空洞になり、アリはここに住み着く。トウの仲間のトウサゴヤシ属 Korthalsia では葉鞘の先端が茎に沿って葉柄より上に伸び、その部分がふくらんでアリの隠れ家となる。 東南アジアからオーストラリアに分布するマメヅタカズラ属 Dischidia は蔓性の植物であるが、そのいくつかがアリ植物であり、葉にアリの巣となる構造を作る。最も目立つ種であるアケビカズラ (Dischidia major; シノニム: D. rafflesiana) では葉に二型があり、小さい方は普通の葉であるが、大きい方が壷状となっており、その内部がアリの隠れ場として利用される。また Dischidia cochleata (シノニム: D. coccinea) などではそのような特別な葉はなく、葉は円形で丸く盛り上がり、裏面は窪んでいて、これを樹皮表面に伏せるとその下の空間がアリの巣になる。 なお、栄養補給型のものでは、巣内部に栄養を吸収するための構造が発達している例もある。アリノスダマに似た着生植物であるアリノトリデ Myrmecodia では、アリの巣になっている茎の内部の空洞の内面の一部にざらざらになった部分があり、ここで栄養吸収が行われる。アリノストリデはマングローブの樹木に着生するもので、一般の森林の着生植物より肥料の摂取が難しいと思われる。上記のアケビカズラでは壷状の葉の中に植物自身の根が入り込んで枝を出し、これがアリの巣を構成すると共に、明らかに栄養の吸収に役立っている。また D. coccinea の場合にもその葉によって作られる空間の下には根が広がる。
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