巣・冬眠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 10:08 UTC 版)
活動期の巣穴は通常深さ50センチメートル・全長約1.2メートルほどである。 北海道は11月下旬には降霜するため、エゾシマリスはその前に地下の巣穴で冬眠に入り、1年のほぼ半分を冬眠して過ごす。冬眠期間は通常10月 - 翌年4月の5 - 7か月間だが、早い個体では9月上旬から冬眠を開始する。エゾシマリスはコウモリ・クマなどほかの冬眠動物と違い冬眠前に体脂肪を貯えない代わりに食物を貯蔵するが、貯蔵量は1つの巣で平均1,192グラム(冬眠日数1日当たり約6グラム)である。 9月中旬ごろ、エゾシマリスは冬眠の準備として新しい冬眠用の巣を決め、食物・巣材の1枯れ葉を巣穴の中に運び込む。冬眠巣は1本のトンネル(180センチメートルほど)の突き当たりに1つの巣室があるが、巣室の3分の2は食物貯蔵庫になっており、その上に乾燥した枯れ葉でベッドを作る。本種は冬眠開始時に出入り口のトンネルを内部から土で塞ぎ、捕食者や貯蔵食物を盗もうとする他のシマリス・ネズミ類の侵入を防ぐ。 メスの冬眠期間は成獣で平均211日・若い個体で平均194日の一方、オスはメスより短く成獣で平均180日・若い個体で平均169日である。メスは毎年冬眠巣の位置を変えるほか、小さい体の割に行動圏が広いため、オスは確実に交尾するため自分の行動圏内のどこでメスが冬眠するかを確認してから冬眠に入ると考えられている。また夏生まれの若い個体は成獣より1か月ほど遅く冬眠に入るため、冬眠に入る順番はほぼ毎年「成獣メス→(約12日後)成獣オス→若メス→若オス」の順となる。成獣メスは平均気温7℃、成獣オス・若メスは4℃、若オスは0℃を切るころまでにほとんどの個体が冬眠に入るため、平均気温が0℃以下になるとエゾシマリスは地上から姿を消す。 冬眠中は体温が低下し、脈拍・呼吸数とも少なくすることでエネルギーの消費を節約するが、10日に1回程度は体温が上昇して目を覚まし、貯蔵した食物を食べたり、トンネル内のトイレで尿・糞を排泄したりする。 冬眠中の死亡率は5%以下と非常に低い一方、活動期間中には雌雄とも半数が姿を消す。冬眠を終えて目覚める時期は春の雪解け時期で、体内時計や湿度への感覚で目覚めて活動を開始する。地上へ向けて新しいトンネルを掘り、冬眠前の出入り口から平均2メートル離れた場所から地上に出る。オスはメスより冬眠期間が短く、より早く冬眠から目覚めるため、最初のメスが冬眠を終えて地上に現れるころにはオスの約89%が既に活動を開始している段階である。
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