展覧会の構成
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観客激増を受け展覧会期末に急遽、32ページのパンフレットが作成されたが、この冊子での作品の分類は展覧会場の部屋分けとは一致していない。 ミュンヘンでの展覧会は、建物の二階から始まっていた。狭い階段を上がった先には、第一室に掛けられた巨大で歪んだキリストの磔刑像の木製彫刻(ルートヴィヒ・ギース作)が眼に飛び込み、部屋に入る観客たちがこれに出くわして震え上がるように意図されていた。この第一室はほかにノルデの宗教画も並ぶ、宗教に対する芸術家による冒涜をテーマとした部屋だった。 第二室はマルク・シャガールらユダヤ人芸術家の絵が並び、彼らを蔑むための部屋だった。 続く大きな第三室は、表現主義や新即物主義やダダイスムの絵を並べ、いかに彼らがドイツ女性を愚弄し娼婦のように描いたか、いかに国防義務や軍人や大戦英雄をあざけったか、いかに黒人芸術がユダヤ人たちの理想とされたか、などいくつかのテーマが設けられた。 第四室以降には特にテーマはなかったが、第五室にはとくにカンディンスキーなどの抽象画や表現主義の風景画が「狂気や病んだ精神の見た風景」と言う煽り文句とともに並べられた。第六室はここまで壁に書かれていた煽り文句はなく、作品の購入金額と美術館名が淡々とならんでいた。第七室はレームブルックの彫刻やさまざまな絵画が並び、「こうした人物がこれまでドイツで教鞭をとっていた」と書かれていた。この下の1階にも彫刻・絵画のほか、版画や本などが展示されたが、オープンが開会式の3日後に遅れたほか、2階のような印象的な分類や煽り文句はなく、ここに気付かず通り過ぎた観客も多く記録も余り残っていない。 壁に書かれた多くの煽り文句には、例として次のようなものがあった。 共産党中央の指令下で、神聖なものを横柄にあざける (第一室) ユダヤ人種魂の暴露 (第二室) ドイツ女性に対する侮辱 (第三室) 理想 - それは白痴と娼婦 (第三室) 美術館のお偉方はこんなものも「ドイツ人民の芸術」と呼んだ (第五室) 会期中に第七室を中心に閉鎖や入れ替えが多くあったとみられるほか、抗議を受けて会場から撤去された作品もあった。展示されていたムンクの作品は母国ノルウェーの抗議があったと思われ、会期中に姿を消している。またフランツ・マルクの大作『青い馬の塔』については、彼は第一次大戦で出征して戦死し、鉄十字勲章を受けた英雄ではないかとの退役軍人たちの抗議があったため、以後の巡回先では撤去された。
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