少年飛行兵の萌芽
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「所沢陸軍飛行学校」の記事における「少年飛行兵の萌芽」の解説
1933年(昭和8年)4月、「陸軍飛行学校ニ於ケル生徒教育ニ関スル件」(勅令第68号)が公布され、8月に施行された。これは所沢陸軍飛行学校に10代の「航空兵科現役下士官ト為スベキ生徒」を入校させ、教育に高い効果が見込める若年のうちから修学させて現役下士官を養成しようとするもので、のちの少年飛行兵制度の基礎となった。具体的には下士官操縦者となる操縦生徒と、飛行機その他航空器材の整備下士官となる技術生徒の2種類である。同年5月、陸軍飛行学校令の改定(軍令陸第10号)が公布され、8月に施行された。この改定では所沢陸軍飛行学校の担当任務に従来の飛行機操縦と機関のほか、気象等に関する諸学術の教育ならびに器材の調査研究と試験が加わり、学生の要件についても見直しが図られた。学校の編制は校長の下に新たに幹事が置かれ、本部のほか、教育部は廃止され操縦科、技術科、気象科となり、研究部、材料廠、学生、そして前述の勅令第68号により生徒隊を置くことが定められた。 勅令第68号および陸軍飛行学校令改定により、所沢陸軍飛行学校の被教育者は次のように定められた(1933年8月時点)。 操縦学生 飛行機操縦に関する学術を修習する者。航空兵科尉官。 当分のうちは航空兵科准士官、下士官も可(学校令附則)。 修学期間等は陸軍大臣が定める。1924年陸達第17号では修学期間は約9か月。通常毎年2回入校。 機関学生 機関に関する学術を修習する者。航空兵科尉官。 当分のうちは航空兵科准士官、下士官も可(学校令附則)。 修学期間等は陸軍大臣が定める。1924年陸達第17号では修学期間は約9か月。通常毎年2回入校。 特種学生 気象その他に関する学術を修習する者。航空兵科准士官、下士官。 修学期間等は陸軍大臣が定める。1924年陸達第17号では修学期間は約9か月。通常毎年2回入校。 操縦生徒 飛行機操縦下士官となるため必要な諸学術を修習する者。民間および陸軍部内から採用。 修学期間は約2年。入校は毎年1回(1934年2月より)。 技術生徒 飛行機と器材の整備下士官となるため必要な諸学術を修習する者。民間および陸軍部内から採用。 修学期間は約3年。入校は毎年1回(1934年2月より)。 その他 臨時に各兵科(憲兵科を除く)の佐官以下を召集し、必要な教育を行うことも可(学校令第5条)。 陸軍大臣の定める民間の希望者に対し、航空術の教授も可(1919年勅令第153号)。 操縦学生および機関学生は学校令の条文では航空兵科尉官のみとされ、准士官、下士官については全条文の後に附則として「当分ノ内」と条件つきで認められるのみである。そこには飛行機操縦および整備という高度な技能分野の下士官は、新しく定められた若年の生徒(制度設立当時「少年航空兵」と通称された)によって補充しようという意図があった。ただし実際に操縦生徒と技術生徒が入校したのは1934年(昭和9年)2月からであり、学校での修学と部隊での実地教育を経て下士官に任官し戦力となるまでには数年が必要であった。 陸軍の諸学校における「学生」とは正規の軍人に限られ、学校に入校してもまだ階級がない者、あるいは候補生は「生徒」となる。これら生徒の教育には下士官(あるいは将校)にふさわしい素養を身につけさせるため、学科、術科に加えて「訓育」を行うのが陸軍の方針であった。具体的には教練、剣道、体操、野外演習などであり、これらの訓育に対応できる施設が必要となった。 それ以外に飛行場の使用をみても「昭和八年度陸軍航空統計表」によれば、所沢陸軍飛行学校の年間飛行日数は309日、年間飛行回数は延べ7万7062回(1日平均249.4回)、全飛行機の年間総飛行時間は延べ1万5764.12時間(1日平均51.01時間)であった。これは飛行量で所沢に次ぐ下志津陸軍飛行学校の年間飛行日数294日、延べ1万7521回(1日平均59.6回)、延べ8956.36時間(1日平均30.5時間)を大きく上回る。1934年2月に入校した操縦生徒70名の飛行操縦教育が始まる翌年度(1934年4月以降)には所沢陸軍飛行学校はさらに繁忙となり、同年11月、埼玉県入間郡元狭山村(現在の入間市狭山台。のちに豊岡町に建設される陸軍航空士官学校本校用地とは異なる)に飛行場を開設し、狭山分教場とした。このほか1937年(昭和12年)6月には山梨県中巨摩郡玉幡村(現在の甲斐市南部)に甲府分教場、長野県上田市に上田分教場が置かれた。
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