小野和子の手記・文書
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1994年(平成6年)1月18日、京都新聞に野田正彰の『危機状況での判断』というエッセイが掲載された。その中で、矢野のセクハラ疑惑について、次のような趣旨のことを書き記している。「矢野の進めてきた研究は私人の趣味ではなく長い年月と社会的経費が投じられたものであり、辞職するには明確な理由がなくてはならない。研究者個人への中傷で辞めるべきではなく、大学もそのような個人攻撃を容認しないという意思を見せるべきであった。元秘書が矢野を告発したいのであれば、刑事告訴をすべきである。」 この文を読んだ小野和子は、匿名でなされた告発は矢野個人への誹謗中傷に過ぎない、と捉えられかねず、現代社会で女性の置かれている状況が理解されていないと考え、以前からセクハラについての原稿を依頼されていたこともあり、1月25日の京都新聞に『学者と人権感覚 矢野元教授問題によせて』と題する手記(以下、「本件手記」)を寄稿した。この中で、小野は、女性職員の有志による告発は事実に反する誹謗中傷ではないことを示し、改善委員会による調査において「三件の軽微なセクハラ」と「一人の女性の、レイプに始まるすさまじいまでのセクハラ」の事実(証言)が出てきたことを書き記している。 本件手記の反論として、2月10日の京都新聞に河上倫逸の『もう一つの人権侵害』が掲載された。その中で、「根深い政治的背景をうかがわせる『事件』が、元秘書に対する『セクシュアル・ハラスメント』という問題に矮小化されてしまいつつある。」とした上で、次のような趣旨のことを書き記している。「矢野の辞職はセクハラ問題による批判を受け入れたものと明言されておらず、辞職自体が本人の自由意志かどうかすら明らかではない。また、批判者は匿名か伝聞の形を取っており、矢野には反論の機会が与えられておらず、客観的に事実確認がなされていない。矢野が犯罪行為を継続的になしてきたと主張するなら刑事告訴がなされるべきであり、矢野も事実関係で争うなら名誉毀損などで告訴すべきである。」 2月20日、京都府婦人センターで開催された「大学でのセクシュアル・ハラスメントと性差別をテーマとする公開シンポジウム」において、小野は自身の作成した『河上倫逸氏に答える セクハラは小事か』と題する文書(以下、「本件文書」)を参加者に配布した。その中で、「セクハラ即ち女性の権利の侵犯は果たして『矮小』なことなのであろうか。」「私たちが問うているのは、その『セクハラは小事』とする差別意識である。」と訴え、改善委員会は被害者から証言を聞いて確認しており、矢野自身が謝罪の念書を提出しているケースもあることを踏まえ、「決していわゆる『伝聞』ではない。」と書き記した。
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