小袖の手とは? わかりやすく解説

小袖の手

作者宮部みゆき

収載図書幻色江戸ごよみ
出版社新人物往来社
刊行年月1994.7

収載図書幻色江戸ごよみ
出版社新潮社
刊行年月1998.9
シリーズ名新潮文庫

収載図書妖異奇談
出版社双葉社
刊行年月2005.1
シリーズ名双葉文庫


小袖の手

作者京極夏彦

収載図書百鬼夜行―陰
出版社講談社
刊行年月1999.7
シリーズ名講談社ノベルス

収載図書文庫版 百鬼夜行―陰
出版社講談社
刊行年月2004.9
シリーズ名講談社文庫


小袖の手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 22:53 UTC 版)

鳥山石燕今昔百鬼拾遺』より「小袖の手」
竜閑斎画『狂歌百物語』より「小袖手」

小袖の手(こそでのて)は、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』などの江戸時代の古書にある日本妖怪小袖(袖口の狭い高級な和服)の袖から、幽霊らしき女性の手が伸びたもの。

概要

『今昔百鬼拾遺』の解説文には「唐詩に 昨日僧裙帯上断腸猶繋琵琶絃とは 妓女亡ぬるを いためる詩にして 僧に供養せしうかれめの帯に なを琵琶の 糸のかかりてありしを見て、腸をたちてかなしめる心也 すべて 女ははかなき衣服調度に心をとどめて なき跡の小袖より 手の出しをまのあたり見し人ありと云」とある。

遊女の死後、死皮(死者の衣服を寺に収める風習)となった小袖を見て、友人たちがその遊女の在りし日を偲んで悲しむ一方、当の遊女はむしろ、誰から身請されずに死ぬまで不自由な生活を強いられたことを悲しみ、身請の金を求めるあまり小袖から手が伸びているのであり[1]江戸時代吉原遊廓風刺した創作と解釈されている[2]

また、遊女がこの小袖を着飾りたかった願いが叶わず、その怨みによって小袖から手が伸びたもの[3]、または小袖の持ち主だった女の生への執着心の妖怪化[4]付喪神(器物が化けた妖怪)の一種などともいわれる[5]

妖怪を主題とした嘉永時代の狂歌本『狂歌百物語』にも「小袖手(こそでのて)」と題して描かれており、本来、死んだ人間の小袖は形見の品となったり、寺に納められて供養されるはずが、高級な小袖が売却され、成仏できない霊がその小袖に取り憑いたものと解釈されている[6]

類話

民俗学者・藤沢衛彦の著書『妖怪画談全集 日本篇 上』には「怨みに籠る小袖の怪」と題して以下のような話があり、石燕の妖怪画との関連性は不明だが、文献によってはこれが「小袖の手」にまつわる怪異譚として述べられている[7]

慶長年間、京都に住む松屋七左衛門という男が、娘のために古着屋から着物を買った。間もなく、娘は病気に侵されてしまった。また七左衛門も家で女の幽霊を目にし、その霊は娘に買ったものと同じ着物を着ていた。七左衛門はその着物を気味悪く思い、売りに出すことにして衣桁に掛けておいた。すると袖口から白い手が伸びてきた。着物をよく調べたところ、布が袈裟懸けに切られ、うまく縫い合わせてごました跡があった。これは武家に仕えていて手討ちに遭った女性の着物だろうと思い、菩提寺に着物を納めて弔ったところ、娘の病気も回復に至ったという[8]

また、1657年(明暦3年)に江戸で発生した大火災・明暦の大火は、別名を振袖火事といって、恋煩いの末に亡くなった娘の振袖を、供養のために寺で焼いたところ、火のついた振袖が風で煽られて火災の原因になったという伝承があるが、これも同様に着物に込められた怨念の仕業によるものとする説がある[9]

また、近藤瑞木は江戸時代の怪談集にいくつか類話を指摘しているが、最も典拠に近いのは『諸州奇事談』巻之二「執着の小袖」であるとしている。[10]

脚注

  1. ^ 多田 2006, pp. 253–255.
  2. ^ 多田 2006, p. 20.
  3. ^ 稲田篤信、田中直日 編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』高田衛監修、国書刊行会、1992年、222頁。ISBN 978-4-336-03386-4 
  4. ^ 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、143頁。ISBN 978-4-04-883926-6 
  5. ^ 粕三平編著『お化け図絵』芳賀書店、1973年、176頁。 NCID BN0895133X 
  6. ^ 京極夏彦多田克己編著『妖怪画本 狂歌百物語』国書刊行会、2008年、297頁。ISBN 978-4-3360-5055-7 
  7. ^ 『日本の妖怪百科』 4巻、岩井宏實監修、河出書房新社、2000年、51頁。ISBN 978-4-309-61384-0 
  8. ^ 藤沢衛彦『妖怪画談全集 日本篇』 上、中央美術社、1929年、61-64頁。 NCID BA49584216 
  9. ^ 『図説 地図とあらすじで読む 日本の妖怪伝説』志村有弘監修、青春出版社、2008年、106頁。ISBN 978-4-413-00965-2 
  10. ^ 近藤瑞木 著「石燕妖怪画の風趣」、小松和彦 編『妖怪文化の伝統と創造』せりか書房、2010年、48頁。ISBN 978-4-79-670297-3 

参考文献


小袖の手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 06:38 UTC 版)

地獄先生ぬ〜べ〜の登場人物」の記事における「小袖の手」の解説

昔の章屋の娘で、少し勝気な女の子着ていたお気に入り着物に魂が宿った妖怪。ある正月思いを寄せている若者神社初詣をするはずだったが、大晦日の夜、神社に向かう途中暗がりから落ちて死んでしまった。その後遺族形見にと大切に残していたその着物に魂だけが宿り妖怪化した百合愛が夏休み田舎祖母の家へ遊び行った時、にあった着物気に入り無理に頼んで家に送ってもらい、元旦初詣のために着た健斗2人きりになりたい百合愛の恋心反応して振袖から現れる。彼女の手となり(言うことを聞かないと胸をはだけさせてタコ踊りをさせると脅しながら)健斗との恋路手伝ってやろうと強引な手段で衛、勇輝茉莉、星、瑠海を追い払い百合愛と健斗2人きりにさせる。さらに2人強引にくっつけさせようとしたところを、郷子と初詣お参りに来たぬ〜べ〜出した白衣観音経で捕まる。よほど恋人との神社での逢引き楽しみにしていたらしく、百合愛を自分代わりに思い果たそうとしていた。最後は娘らしく出店初詣楽しみにしていたことで百合愛に説得され自分今まで行ったことを反省し楽しく初詣過ごした

※この「小袖の手」の解説は、「地獄先生ぬ〜べ〜の登場人物」の解説の一部です。
「小袖の手」を含む「地獄先生ぬ〜べ〜の登場人物」の記事については、「地獄先生ぬ〜べ〜の登場人物」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「小袖の手」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「小袖の手」の関連用語

小袖の手のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



小袖の手のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの小袖の手 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの地獄先生ぬ〜べ〜の登場人物 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS