富山湾の蜃気楼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 09:28 UTC 版)
日本では、専ら富山湾に集中的に頻繁に現れる蜃気楼が有名で、富山湾では上位蜃気楼と下位蜃気楼の両方が現れる類い稀な特徴がある。 2020年(令和2年)3月10日に、「魚津浦の蜃気楼(御旅屋跡)」として国の登録記念物(景勝地)に登録されている。北陸道が海岸沿いを通る場所(現在の魚津市大町海岸公園)に、加賀藩ならびに、富山藩、大聖寺藩専用の御旅屋あったことから、前田綱紀や前田治脩が観賞した由緒と古来からの歴史がある景勝地の蜃気楼である。 魚津市街やその付近の滑川市街や黒部市街などの海岸部などから、ある条件がそろった麗らかな日和に蜃気楼を望むことができる。富山湾越に富山市(岩瀬)方向や黒部市(生地)方向に現れ、初春から初夏はしばしば現れる。北西の能登島方向には、出現が確認されることは少ない。また、対岸の能登や氷見からは、海底地形などの影響から上位蜃気楼をみることが出来ない。 富山湾とその付近の地形と気象による特有現象であり、対馬暖流が回り込む富山湾においては、春や初夏は、北アルプス立山連峰に水源をもつ大きな急流河川、常願寺川、早月川、片貝川、黒部川その他から同時に冷たい雪解け水が大量に注ぎ込まれ、上空に流れる暖かい空気層に相対して海面は冷たく保たれることで上位蜃気楼となり、逆に、秋や冬は、上空の冷たい空気層に相対して海面が暖かく保たれていることから下位蜃気楼になることが知られている。 なお、この岩瀬~生地沿岸の海面は、他にも「ホタルイカ群遊海面」の名称で特別天然記念物に指定してホタルイカとともに保存されている。富山湾に出現する蜃気楼は、立山連峰による気象と言えて、神が住まう立山と竜が住まう海の神秘なる自然と理解される富山湾の神秘である。立山寺の伝承の基の一つであると供に神仙境の立山や『山海経』「海内北経」が示す東方三神山の幻の蓬萊山と一致し、古くから神話の竜宮城があると考えられてきた。 1992年より魚津埋没林博物館の学芸員が毎年の出現回数を、1996年4月より回数に加えて、3台のカメラと屋外の肉眼での観測を行ない、A〜Eの5段階評価で発表している。Aランクは肉眼でもはっきり明瞭に見え、誰もが満足するもの、Cランクは蜃気楼の知識がない人や、双眼鏡を使用せず肉眼で見ている人の半数がわかるものとしている。ただ刻々と変化するのであくまでも目安としている。Aランクの蜃気楼は滅多に現れることはなく、ここ最近では2005年と2018年6月30日に現れただけで、観測を始めてからも8回のみである。 2020年(令和2年)3月より、魚津埋没林博物館と富山大学は共同で、魚津市の海岸線、早月川沿いにある遊園地「ミラージュランド」の観覧車の支柱3ヵ所(それぞれ地上8m、18m、33m)に海上に向け温度計を設置、それぞれの高度の気温を10分ごとに観測し、蜃気楼が発生する気象条件を探るとともに、発生予報に役立てばとし、3月から9月まで「海の駅蜃気楼」にてデータをもとに「見えるかも、見えないかも」の2択で表示していたが、的中率は48%であったため精度向上を目指し、高さ11mから25mの間に新たに温度計を設置し、2021年(令和3年)以降も引き続き観測を行う。
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