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大辞典

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/27 15:45 UTC 版)

大辞典
言語 日本語
類型 国語辞典
編者・監修者 山田美妙
出版地 日本
出版者 嵩山堂
最初の出版日 1912年5月 (113年前) (1912-05)
排列 五十音順
索引
数量 ; 大きさ 2冊 (上・下5056p);23cm
付録
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大辞典』(だいじてん)は、1912年明治45年)5月に嵩山堂から刊行された国語辞典である。上下巻2冊。収録語数は約18万600語。晩年の山田美妙(山田武太郎)が編纂し、美妙の遺著となった。近代の国語辞典のなかでも最も早い時期に、人名や地名などの固有名詞のほか、学術用語などを多く収録した。

来歴

晩年の山田美妙(1910年頃)
1892年7月から翌1893年12月にかけて、『日本大辞書』全11冊および附録を発刊して以来、文学者の活動だけではなく辞書編纂者としても活動をしており、『新式節用辞典』(1892年)、『万国人名辞書』(1893年)、『日本地名全辞書』(1893年)、『漢語故諺熟語大辞林』(1901年)など、多様な辞書類を編纂していた[1]

1905年(明治38年)7月、美妙は嵩山堂から後の『大辞典』となる辞典の編纂を引き受けた[2]。当時の美妙は、自然主義全盛の文壇から評価されうるような小説を書くことができず、この辞典編纂が美妙一家の生活を経済的に支える仕事となった[3]。そのため1906年から1907年にかけて、美妙の仕事は辞典編纂に占められるようになったとされる[4]

1908年(明治41年)1月には嵩山堂から辞典の刊行中止が宣告されるも、美妙の友人であった村上浪六の尽力もあり、辞書出版の計画は再開された[5]。その後、美妙は同年7月に脱稿している[6]。しかし、美妙は1910年(明治43年)10月24日に死去し、『大辞典』は美妙の遺著となった[6]。『大辞典』は1912年5月に刊行された[7]

特徴

『大辞典』校正刷(早稲田大学図書館所蔵)

上下2冊、上巻は2586頁(あ~そ)、下巻は2587頁から5056頁(た~を)で構成されている[7]山田忠雄によれば、見出し語総数は「十八万六百余語」とされる[7]。1頁3段となっており、1段30行[7]。一般事項の語釈は1行ほどであるが、固有名詞などの百科事典的語彙は平均5、6行をかけて説明されている[7][注 1]

国内外の人名や地名といった固有名詞を収録した最初期の国語辞典とされる[8]。学術や専門用語もよく収録した[9]。そのほかに習俗祭事故事、動植物、時事的な政治・政変に関する語句も収録された[10]。生物関係では、先行の専門書の記述と酷似している箇所があることも指摘されている[11]

また、武藤康史は、『大辞典』は一般事項の部分においても特色があり、口語形や口頭語形を見出し語としている傾向が強いことを指摘しており[12]、例えば笑い声や笑い方に関する語句は、当時の他の辞典と比べてより多く、かつ細かな言葉まで収録されていることを紹介している[13]

『大辞典』以前に美妙が編纂した辞典として著名なものは『日本大辞書』があるが、『大辞典』には『日本大辞書』に収録されていない語も多々あるとされる[14]。また、固有名詞などの収録数も、『日本大辞書』と比べて大幅に増加した[15]

評価

『大辞典』は美妙が晩年に最も力を割いた仕事であったが、一般社会へは普及しなかった[6][16]。その要因として、塩田良平は辞書編纂方法がその他の近代的な辞典と比べて「餘に小規模な手工業的な方法であった」ことを指摘している[6]。その他に、本全体の組が荒く、印刷割り付けも質が良くなく、加えて値段が高価であったと推測される点も、普及の妨げになったと指摘されている[17]。また内容的に雑駁・速成的なところがあるという指摘もある[18]

山田忠雄によれば、『大辞典』は『日本大辞書』の発展上に位置するものではなく、別著として考えるべき辞典であるとし[15]、『日本大辞書』の「癖は大いに矯正され、読むに堪える辞書として長足の進歩を遂げたもの」と評価している[16]

脚注

注釈

  1. ^ 例えば「にうとん」 (Newton)などは1000字ほどかけて説明されている[8]

出典

  1. ^ 宗像和重 (2011), p. 223.
  2. ^ 塩田良平 (1989), p. 179.
  3. ^ 塩田良平 (1989), p. 180.
  4. ^ 塩田良平 (1989), p. 181.
  5. ^ 塩田良平 (1989), pp. 181–182.
  6. ^ a b c d 塩田良平 (1989), p. 182.
  7. ^ a b c d e 山田忠雄 (1981), p. 644.
  8. ^ a b 武藤康史 (2002), pp. 28–29.
  9. ^ 武藤康史 (2002), pp. 32–33.
  10. ^ 山田忠雄 (1981), pp. 644, 646–648.
  11. ^ 仲田崇志 (2022), p. 108.
  12. ^ 武藤康史 (2002), pp. 49–55.
  13. ^ 武藤康史 (2002), pp. 34–51.
  14. ^ 武藤康史 (2002), p. 55.
  15. ^ a b 山田忠雄 (1981), p. 648.
  16. ^ a b 山田忠雄 (1981), p. 652.
  17. ^ 山田忠雄 (1981), pp. 648, 652.
  18. ^ 吉田金彦 (1971), p. 530.

参考文献

図書
論文

外部リンク


大辞典

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 14:01 UTC 版)

ウェブスター辞典」の記事における「大辞典」の解説

ジョセフ・ウスターが1860年革新的な辞典刊行すると、ジョージチャールズ・メリアム社は1864年、「アメリカ英語辞典」と銘打った改訂版作り上げている。イエール大学編集者であるノア・ポーターが編纂に当たり、114千項目を収録同書ドイツの哲学者カール・アウグスト・フリードリヒ・マーンが中心となり改訂行ったため、ウェブスターマーン版とも呼ばれるが、これまでのウェブスター辞典総点検した、初の大辞典であった。なお、マーンこれまでウェブスター辞典依拠していた、聖書による語源解釈排除している。1879年に4600語以上もの新語や、9700名以上もの著名人収めた付録の他、1884年には発音索引収録した補遺発行。 後にオックスフォード英語辞典携わる歴史家K・Mエリザベス・マレーは、1864年の大辞典が「国際的な名声得た。他の如何なる辞典をも凌駕するようになり、英米のみならず極東においても語義に関する権威にまで登り詰めた」としている。

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