多数決の正当化の仕方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 23:06 UTC 版)
正当性の契機 主権をもつすべての合議員が議論に参加し、結果として優勢な結論として得られたものを意思決定の正当性の契機ととられるもの。 主権の平等性 主権の至上性や平等性は比較を受け付けない。合議員が互いの主権を最大限尊重(尊敬)している場合、たった一票の反対であっても合意は成立しない(全会一致)が、急迫性のある議題については多数決によるにせよ、その合意の困難さに見合うだけの費用をもって少数派(多数派)との互譲が事後的に行われるはずである(緊急動議)。 経験論的見地 判例の蓄積により社会的に受け入れられつつある合意については、少数派の反論(少数説)を考慮しながらも当面の合意事項として公式な法として明文化することが可能である。 功利主義的見地 各主権者(主体)の効用を最大化させるための費用便益分析は可能であり、最適費用が算出可能な場合、合意には正当性がある(最小原理)。空港騒音問題に際して、圧倒的多数派が防音対策や夜間発着禁止などの費用を負担する代わりに、少数派が日常での不便・不具合を忍従するといった場合。難破船の食料不足を解決するために、最も弱った船員を殺傷して食料とする合意(ミニョネット号事件・ひかりごけ事件)。 宗教的な規律 多数決が宗教上の手続きによって定められているもの。寺院などで行われているもの。 陪審定理 政治思想とは無関係の理論体系である確率論を用いて、多数の一般国民による多数決は少数のエリートによる意思決定を越える信頼性を持つことを主張している。 紛争モデル 時代・地域を問わず最も普遍的な正当性を持つ意志決定の方法は、構成員同士による武力衝突である。この意思決定方法は極めて普遍的な正当性を持ち、有史以来、異なる意思決定制度を用いる国家間にすら共通の合意形成を強制してきた。多数決はこれを簡便化し低コストで模倣したものであり、武力衝突に準ずる普遍的な正当性を得ることが出来る。例えばスイスのランツゲマインデでは、剣が、それを携帯している参加者の投票権を証明した。革命・内乱・暴動・クーデターなどの決定的な分断と暴力行為から主権を保護するための最適モデルとして投票行動の正当性が主張される。 全会一致の幻想 全会一致がつねに求められる場合、なんらかの抑圧により少数者の意見(利益)がないがしろにされている可能性がある。少数意見(利益)の実在を確認することによって合意の反証可能性が確保される。
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