多数決の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 23:06 UTC 版)
少数意見の抑圧 評議員に平等の主権を前提とした場合、つねに少数意見(少数利益)が抑圧される危険性がある。「多数派による専制」。少数派の自治や多数派との盟約(コンパクト)などが利用される。ちなみに、アメリカの発明家エジソンは、青年時代に押しボタン式の投票装置を発明し、議会において賛成票と反対票の数を瞬時に集計できる画期的な機械として売り込みを図ったが、そのような機械で少数意見を簡単に切り捨てることは民主政治の精神に反するとして、実際の議会では採用されなかった。 ヘルベルト・マルクーゼは、1965年に寛容の本質について論じた『抑圧的寛容』(Repressive Tolerance)において「多数派による専制」を容認する寛容を「消極的寛容」と批判し既存の多数決主義の半民主主義から脱却した真の民主主義を主張した。 衆人に訴える論証 多数を以てより優れた判断だと見なすことが、未来の予測を含む意思決定にとって正しいかどうか論証的にはわからない。1人の才能により価値が創造されることがあり、危機が回避されることがある。イラク戦争の際、アメリカ下院で武力行使に反対したのは、バーバラ・リーただ一人だった。のちリーの判断は正しかったことが実証された。 合議体の破綻 互いに譲り合えない基本的な利益についての互譲をもたらすには、非常に長い時間と粘り強い議論が必要となるが、急進派による性急な意思決定により決定的な分断が生じる可能性がある。「分裂した家(A house divided)」問題。 場の空気 社会心理学の見地から、他の主権者の意思を尊重する結果として、互譲の結果だれもが望まない結論に合意することがある(アビリーンのパラドックス)。 構成員の問題・パーテイション 当初から他の合議員の主権を尊重(尊敬)しない議員がいる場合、少数意見に多数派が支配される可能性がある。主権に階層が設定されるばあい(党派・パーテイション)最小勝利連合が成立する。
※この「多数決の問題点」の解説は、「多数決」の解説の一部です。
「多数決の問題点」を含む「多数決」の記事については、「多数決」の概要を参照ください。
- 多数決の問題点のページへのリンク