外れた予言
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「アンドリュー・タネンバウムとリーヌス・トーヴァルズの議論」の記事における「外れた予言」の解説
この論点と初期の全ての議論は、オライリーメディアから1999年に出版された書籍 Open Sources: Voices from the Open Source Revolution (日本語訳『オープンソースソフトウェア― 彼らはいかにしてビジネススタンダードになったのか』) に収録されている。この書籍ではこの議論を「オペレーティングシステムの設計について当時はどのように考えられていたか」を示す例であると言及している。 Intel 80386 プロセサは、1992年の議論の後に、最も普及したプロセサとなった。そのとき、Intel 486 プロセサはハイエンドのコンピュータで使われており、また Intel 80286 プロセサは既に時代遅れになっており、World Wide Web は未だ広く使われるようにはなっていなかった。タネンバウムによるLinuxに対する批判の一つは、x86系列のプロセサに密接に結びつき過ぎているということであった。しかし2008年の時点では、x86系列のアーキテクチャのプロセサは、デスクトップコンピュータのプロセサとして世界で最も一般的に使われ続けている。 Linuxは、x86系列以外の数多くのプロセサアーキテクチャに移植されてきている。Linuxが移植されたプロセサアーキテクチャとしては、DEC Alpha、SPARC、POWER/PowerPC、MIPS、680x0、ARM、IA-64、x64 などがある (この他にも多数のプロセサアーキテクチャに移植されている) 。 もう一つ、議論で繰り返し言及されてきたのは、LinuxやMINIXの代わりとして使うことができるシステムについてであった。例えば、GNUと4.4BSDである。タネンバウムは、議論の発端となった最初の投稿では、GNUを薦めていた。GNUはLinuxと異なり、「現代的な」 (モダンな) システムであると述べたのであった。タネンバウムは、2回目の投稿で次のように述べた。「 [...] 5年後には誰もが自由なGNUを、200MIPSで64MBのSPARCstation-5 [ のコンピュータで ] 動かしていることでしょう。」議論に参加した人々のうち複数の人々が、GNUはLinuxやMINIXの代わりとしてはふさわしくないと考えた。Kevin Brown は、GNUをベーパーウェアと呼び、(GNUではなく) Linuxによりx86アーキテクチャから大きな恩恵を受けることができるであろうと述べた。x86アーキテクチャは、この議論の後も一般的に使われ続けており、一般の人々が手に入れやすいアーキテクチャとなっている。Linuxの初期の開発に貢献したセオドア・ツォーは、マイクロカーネルの方法からは恩恵を受けることができるであろう、しかし「 [...] Linuxは手元にあります。そしてGNUは手元にありません。— そして複数の人々が [ GNU ] Hurd を長い期間をかけて開発し続けてきています。それも、リーナスがLinuxを開発してきた期間よりもずっと長い期間をかけて。」トーヴァルズは、GNUの人々の努力に関心を払ってきたが、次のように述べている。「もしGNUのカーネルが去年 (1991年) の春に完成していれば、わざわざ自分のプロジェクトを始めたりはしなかったでしょう。しかしGNUのカーネルは去年の春には完成していませんでしたし、現在も完成していません。」 4.4BSD-Lite は、USLとBSDiとの間の訴訟のために、2年間使うことができない状態だった。この訴訟は、AT&Tの子会社である Unix System Laboratories (USL) が Berkeley Software Design (BSDi) を訴えたことによるものであった。BSDiは、UNIXに関する知的財産権に直接に関係していた。この訴訟のために、BSDから派生した自由なソフトウェアは、2年近くの間、BSDの法的な状態が疑わしい情況であったので、開発が遅くなってしまった。Linuxにはこのような法的な曖昧さは存在しなかったため、Linuxに基づくシステムは広く支援を受けることができた。USLとBSDiとの間で和解が交わされたのは、1994年1月のことであった。その後1994年6月に4.4BSDがリリースされた。なお4.4BSDの最後のリリースは1995年に行われたが、4.4BSDに基づいた複数の自由なバージョンがその後開発されてきている。4.4BSDに基づいた自由なバージョンとしては、FreeBSD、NetBSD、OpenBSDなどがある。
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