変化する定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 17:22 UTC 版)
デイヴィッド・G・ハートウェル(英語版)とキャスリン・クラマー(英語版)は2006年のスペースオペラのアンソロジーで「(何がスペースオペラなのかという)一般的合意は存在せず、最善の例となる作家群も定まっておらず、どの作品がスペースオペラと呼ぶにふさわしいかも定まっていない」と記している。彼らはさらに、スペースオペラにはその歴史を通じていくつかの鍵となる異なった定義、文学界の駆け引きに大きく影響された定義がなされてきたことを指摘した。彼らは「かつてサイエンス・ファンタジーと呼ばれていたものが今はスペースオペラと呼ばれ、かつてのスペースオペラは忘れ去られている」と主張している。 「スペースオペラ」という用語自体は1941年、当時ファンライターだったウィルスン・タッカーが作ったもので、ファンジンの記事で蔑称として使ったのが最初である。当時、アメリカでは連続ラジオドラマが人気となっており、石鹸製造業者がスポンサーということが多かったことからソープオペラと呼ばれていた。タッカーはSF界におけるソープオペラとしてスペースオペラを定義した。すなわち「切り刻まれ、すりつぶされ、悪臭を放つ、時代遅れの宇宙船の作り話」("hacky, grinding, stinking, outworn, spaceship yarn")だとした。また、それ以前から西部劇を意味する用語としてホースオペラという言葉があるので、舞台を西部から宇宙空間や異星の惑星に移してガンマン・馬・拳銃・山賊などホースオペラの題材を、宇宙兵士・宇宙船・光線銃・宇宙海賊といったSF風のガジェットに置き換えたものだ、というような「スペースオペラ」という語の解釈もある。質の悪いSFを「スペースオペラ」と呼ぶ使い方は1970年代ごろまで残った。近年スペースオペラと呼ばれる作品は、元々蔑称だったという意味ではスペースオペラではない。 1960年代からスペースオペラの新たな定義が生まれ、1970年代にはそれが広く定着した。それはブライアン・オールディスがアンソロジー『 Space Opera(英語版)』 (1974) で定義したもので、(ハートウェルとクラマーの意訳によれば)「古き良き(時代遅れの)SF」という定義である。この再定義にはすぐさま異論が出てきた。例えば、デル・レイ・ブックスを経営していた編集者のジュディ・リン・デル・レイが異論を唱え、夫で同僚のレスター・デル・レイもレビューなどで反論した。彼らの反論はスペースオペラは時代遅れではないということで、デル・レイ・ブックスはリイ・ブラケットの初期作品をスペースオペラと銘打って再版していた。 1980年代初めには、スペースオペラは「宇宙を舞台とした冒険活劇」と再定義され、『スター・ウォーズシリーズ』などの有名な大衆文化作品がスペースオペラと呼ばれるようになった。スペースオペラがSFのまともなジャンルとして認識されはじめたのは、1990年代初め以降のことである。ハートウェルとクラマーはスペースオペラを「カラフルで劇的で壮大なSF冒険活劇であり、適切で時に美しい文体であり、優しく勇ましい主人公とアクションが中心で、比較的遠い未来と宇宙や異世界を舞台とし、独特な楽観的トーンで描かれる。戦争、海賊行為、軍隊、極めて壮大なアクションなどを扱うことが多い。」と定義している。
※この「変化する定義」の解説は、「スペースオペラ」の解説の一部です。
「変化する定義」を含む「スペースオペラ」の記事については、「スペースオペラ」の概要を参照ください。
- 変化する定義のページへのリンク