坪尻駅
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坪尻駅 | |
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駅舎(2017年3月)
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つぼじり Tsubojiri |
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◄D18 讃岐財田 (8.2 km)
(3.3 km) 箸蔵 D20►
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所在地 | 徳島県三好市池田町西山 |
駅番号 | ○D19 |
所属事業者 | 四国旅客鉄道(JR四国) |
所属路線 | ■土讃線 |
キロ程 | 32.1 km(多度津起点) |
電報略号 | ツリ |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 1面1線 |
乗降人員 -統計年度- |
2[1]人/日 -2019年- |
開業年月日 | 1950年(昭和25年)1月10日 |
備考 | 無人駅 |
坪尻駅(つぼじりえき)は、徳島県三好市池田町西山にある、四国旅客鉄道(JR四国)土讃線の駅である。駅番号はD19。
車道や集落には山道でしか通じておらず徒歩でしか駅へ向かうことのできない、いわゆる秘境駅の一つとして知られる[2]。
概要
阿讃山地の谷あい[3]、徳島県と香川県の県境にある猪ノ鼻峠付近、標高272 m[4]の地点に位置する。周辺に集落は複数あるが、駅まで行ける車道は無い。
勾配がきついためスイッチバック駅になっており、香川県側から来た列車は同駅をいったん通り過ぎてから後退し、香川県側へ向かう列車は一度戻ってから斜面を登っていく[2][注釈 1]。
駅利用者が極めて少ない上に、普通列車自体が減便されているため、同駅に停車する定期列車は1日で3本ずつのみ。終列車は、下り(阿波池田行き)16:52発、上り(多度津行き)13:52発に設定されている(2024年9月時点)。
歴史
- 1929年(昭和4年)4月23日:坪尻信号場として開設[5]。4月28日 - 讃岐財田駅 - 佃信号場間開業[6]。
- 1950年(昭和25年)1月10日:信号場から駅に昇格し、坪尻駅開業[7]。
- 1970年(昭和45年)
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化によりJR四国の駅となる[8]。
- 2010年(平成22年)1月11日:坪尻駅還暦祝賀会を開催、臨時列車「坪尻秘境号」運転[11]。
- 2015年(平成27年)3月21日:トロッコ列車「絶景!土讃線秘境トロッコ」が運転開始し、運転停車を開始(ホーム停車中のみ下車可能)[12]。
- 2017年(平成29年)4月1日:観光特急列車「四国まんなか千年ものがたり」がトロッコ列車に代わって運転開始し、引き続き当駅に運転停車(ホーム停車中のみ下車可能)。
駅構造
単式ホーム1面1線を有するスイッチバック式の地上駅で、阿波池田駅管理の無人駅。ホームは2両分のみ嵩上げされている。
ホームが1面1線のみのため、当駅で普通列車同士が行き違う場合はいずれかが必ず通過となる[4]。本線通過制限速度は100 km/hで、通過列車は、横の本線を高速で去っていく。かつてはシーサス・クロッシングポイントが設置されていた(画像参照)が、JR化後の高速化改良工事により撤去され、現在の形となった。
当駅で停車する列車においては、下り列車は引き上げ線に待避してから駅に進入し、上り列車は駅を出発して引き上げ線に待避したのち讃岐財田駅に向かう。運転士は進行方向を変えるごとに必ず前方となる運転台へ移動する(車掌が乗務する列車ではバックで進入させることもある)。
駅舎内の待合室は出入口・ホーム側ともに引き戸となっており閉めることもできるため、虫の侵入を防ぐことができる。また、待合室内には発車時刻表、10分以上停車する列車の時刻表、定期列車の通過時刻表が掲示されている(通過時刻表は踏切にも掲示されている)。このほか、駅ノート[2]や駅スタンプが置かれている。駅スタンプは当初、2008年5月15日に地元の町づくり団体から寄贈されたものが置かれていたが、2010年2月10日に紛失したことが判明し[13]、その2か月後に、青森県の津軽線中沢駅で発見された[14]。しかし、2018年8月に、再び駅スタンプが紛失したことが判明し、今回も盗難に遭ったと見られている[15]。2019年1月時点でも発見できなかったことから、2個目の駅スタンプが設置された[16]。
なお、駅舎内のトイレは閉鎖されており、現在は使用できなくなっている。
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構内(2008年8月)
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坪尻駅より県道へ出る道に繋がる踏切。通行の際には遮断桿を押して渡る(2017年3月)
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引き上げ線(2009年3月)
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県道上の駅入口。道路標識支柱の場所に四国交通バス停がある(2008年8月)
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シーサス・クロッシングポイントがあった頃の坪尻駅(1983年)
利用状況
駅から徒歩で30分ほど山道を登った所に
1997年6月20日放送の朝日放送(ABCテレビ)製作の『探偵!ナイトスクープ』では、番組に寄せられた「この駅の乗降客数を調べてほしい」という依頼で、調査が行われた[19]。その際の乗降客数は24時間で、一組の夫婦が駅から出かけ、駅へ帰ってきた「のべ4人」だった。鉄道ルポ漫画『鉄子の旅』では、2003年9月にこの駅を訪れた際、30分くらい歩いたところに住んでいる77歳の老人と遭遇した様子が描かれている(単行本第2集収録・第16旅)。
1998年4月22日に放送されたテレビアニメ『センチメンタルジャーニー』の第3話「七瀬優 -星降る夜の天使-」にてストーリーの冒頭で当駅が登場したことがあり、熱心な同作品のファンの訪問(聖地巡礼)により利用客が微増していた時期があった。
2010年6月2日に放送されたテレビ朝日系列のバラエティ番組『ナニコレ珍百景』で、「利用者が1人しか居ない駅」として紹介された。その1人とは『探偵!ナイトスクープ』で紹介された夫婦の夫の方である。その後2014年6月4日に放送された同番組で、その男性は体調を崩し入院中のため利用していないが、駅を見にくる他の利用者がいると紹介された[20]。
2016年9月14日に放送されたフジテレビ系列のバラエティ番組『世界の何だコレ!?ミステリー 日本の謎を大調査SP/消えた秘宝が徳島に眠る?』において、当駅開業当初は1日平均20名の利用者がおり、現在はある意味面白い駅として、全国から利用者がいることが証言されている[21]。
駅周辺
鮎苦谷川沿いの谷に駅が位置するため、車では近づくことができず、到達手段は徒歩のみである[4]。
駅舎を出ると、東側・西側にそれぞれ山道が1本ずつあり、駅舎の南側にある踏切[注釈 2] を東側へ渡って10 - 20分程度歩くと徳島県道5号観音寺池田線(旧国道32号。2021年4月に国道指定取り消し)に、西側へ行くと市道に出る。ただし、山道にはゴミが散乱していたり倒木があったりする場合があるほか、降雨時や雨上がりは地面がぬかるんでおり、ごく一部を除いて柵がないため崖下に落ちる危険性もあるため注意が必要。また、季節によってはマムシやハチが出ることもある。
2009年4月時点で、駅の周辺にある建物は1軒の廃屋のみである[22]。昭和40年代後半までは駅近くで雑貨店が営業していたが[23]、現在は廃屋となって放置されている(連続強盗殺人の犯人が押し入った店跡である。「四国連続強盗殺人事件」参照)。なお、この廃墟内にドラムセットが放置されていることは廃墟マニアや鉄道マニアなどの間で有名であるが、そのドラムセットは一度撤去されたに拘らず、いつの間にか再びドラムセットが置かれていたという都市伝説がある。
当駅は近隣住民の請願によって駅に昇格したこともあり、旧国道32号より駅までの600メートルの山道は、近隣住民による手作りであることが『世界の何だコレ!?ミステリー』で証言されている。
なお、駅が立地しているのは、元は鮎苦谷川(州津川)の川底だった場所である。建設に際して、敷地を確保するため水を流すトンネルを掘削して川の流路を変えた上で川底を埋め立て、駅(当時は信号場)が設置された[24]。線路を通すためにトンネルで川を迂回させた場所は当駅の前後にも1か所ずつあり、そのうちの1つは坪尻駅より多度津側のトンネルを出た車窓の西側に見える。
駅から直線距離で500メートルほど南東に離れた県道近くの場所[25] に坪尻駅展望台(落展望台)が設けられており[4]、遠目になるがここから駅を眺めることができる。
バス路線
香川・徳島県道5号線沿いに四国交通の「坪尻」停留所があり、野呂内線のバスが経由する。なお、1月1日は全便運休となる[26]。
その他
- ミステリー小説の短編集『秘境駅のクローズド・サークル』(鵜林伸也著、東京創元社、2022年刊)の表題作では坪尻駅とその周辺を舞台にした殺人事件が発生し、スイッチバックを利用したトリックが考案されている。
隣の駅
脚注
注釈
出典
- ^ “徳島県 駅乗降客数”. 2021年3月11日閲覧。[要文献特定詳細情報]
- ^ a b c 「【いいね!探訪記】JR坪尻駅(徳島県三好市)何もないだから降りたい」『朝日新聞』2022年12月17日、夕刊、3面。2022年12月24日閲覧。
- ^ 日本第四紀学会 編『東四国の自然を楽しむガイドブック —地形・地質を中心として—』(PDF)日本第四紀学会、2012年2月29日 。2022年3月16日閲覧。
- ^ a b c d “坪尻駅(スイッチバック駅)”. ニッポン旅マガジン. プレスマンユニオン. 2022年4月20日閲覧。
- ^ 鉄道省 編「豫讃線」『鉄道停車場一覧』 昭和9年12月15日現在、川口印刷所出版部、1935年、105頁。NDLJP:1212697/76。
- ^ 大蔵省印刷局(編)「鐡道省告示第七十八號」『官報』第690号、日本マイクロ写真、1929年4月20日、555-556頁、NDLJP:2957156/2。
- ^ 大蔵省印刷局(編)「日本国有鉄道公示 第5号」『官報』第6895号、日本マイクロ写真、1950年1月9日、30頁、NDLJP:2963439/4。
- ^ a b 石野哲 編『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』 II(初版)、JTB、1998年10月1日、664頁。ISBN 978-4-533-02980-6。
- ^ 「通報 ●土讃本線及び中村線の駅員無配置について(旅客局)」『鉄道公報』日本国有鉄道総裁室文書課、1970年9月26日、7面。
- ^ 「日本国有鉄道公示第389号」『官報』1970年9月26日。
- ^ ※記事名不明※『交通新聞』2010年1月14日
- ^ “絶景!土讃線秘境トロッコ号」デビュー!”. 巡るめく四国 四国地区観光公式サイト (2015年3月24日). 2018年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月23日閲覧。
- ^ “徳島新聞「寄せ書きノート9冊なくなる」”. 徳島新聞 (2009年4月24日). 2009年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月1日閲覧。
- ^ “不可解な旅…土讃線坪尻駅で盗難のスタンプ青森に”. 読売新聞 (2010年4月25日). 2010年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月29日閲覧。
- ^ “無人の「秘境駅」スタンプ、盗難か 8年前も持ち去られ”. 朝日新聞 (2018年12月17日). 2018年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月23日閲覧。
- ^ “坪尻駅スタンプ 苦渋の新調”. YOMIURI ONLINE(読売新聞) (2019年1月8日). 2019年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月8日閲覧。
- ^ “徳島県 駅乗降客数”. 2021年3月10日閲覧。[要文献特定詳細情報]
- ^ “所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ! 2014年4月4日放送回”. gooテレビ番組. 2017年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月26日閲覧。
- ^ “ロケ実績一覧”. 徳島県ロケーション・サービス. 徳島県. 2015年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月21日閲覧。
- ^ “「ナニコレ珍百景」2014年6月4日放送回”. gooテレビ番組. 2017年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月26日閲覧。
- ^ “「世界の何だコレ!?ミステリー」2016年9月14日放送回”. gooテレビ番組. 2017年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月26日閲覧。
- ^ 『四国新聞』2009年4月29日朝刊1頁「【一日一言】」(四国新聞社)
- ^ 『徳島新聞』2016年11月5日朝刊14頁「文化の日催し弾む 各地」(徳島新聞社)
- ^ “土讃線いま昔”. 徳島新聞. 2014年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月19日閲覧。
- ^ 北緯34度03分03.9秒 東経133度49分38.6秒 / 北緯34.051083度 東経133.827389度
- ^ “野呂内線時刻表(2020年11月25日改正)” (PDF). 四国交通. 2020年12月8日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 坪尻駅 時刻表 (PDF) - 四国旅客鉄道
- 坪尻駅 秘境にある遊び心をくすぐる駅舎 - NHK映像マップみちしる
- 秘境駅で知られる坪尻駅 - YouTube(徳島新聞動画 TPV提供、2016年4月10日公開)
- 坪尻駅のページへのリンク