地球の氷床
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 14:20 UTC 版)
現世の地球における大陸配置は、長い地質時代の中にあって寒冷化しやすい状況にあり、したがって、氷床もまた形成されやすい環境になっていると言うことができる。まず第一に、パンゲア大陸のような超大陸の形成時代とは違い、陸塊が分断されている現世にあっては暖流が極域まで到達しやすい大陸配置(地球全体が温まりやすい大陸配置)にはなっていない。 また、気温差の影響を水域より強く受ける陸部が多く分布する北半球は、それらが高緯度地域に多く集まっているために氷河が形成されやすく、ひとたび形成された氷河は氷が持つ特性ゆえに太陽光を反射して気温を低下させ、さらなる氷河の形成を促す。一方、南半球は、海域が大部分を占めていて温度変化が小さいとは言え、南極大陸が南極地域を占有している上にその周囲を冷たい南極環流が巡って暖流の流入を遮断しているため、極域(南極圏)に限っては氷が氷を生むと同時に暖気を寄せ付けない特殊な環境となっている。 現存する地球上の氷床は、南極大陸にある南極氷床とグリーンランドにあるグリーンランド氷床(英語版)のみであるが、最終氷期の最寒冷期においては、上記のものに加えて、北アメリカにローレンタイド氷床(英語版)が、ヨーロッパ北部にスカンジナヴィア氷床(英語版)が、南アメリカはチリのパタゴニアにパタゴニア氷床(英語版)が発達していた。 氷床は表面は寒冷であるが、その底部は暖かく融解し、融解水が氷床の流動を促している。この過程は氷床内部に速い流れの水路を作っている。 現在の極域の氷床は、地質学的に見れば比較的新しい。 南極氷床は、新生代暁新世前期に初めて形成された以来、おそらく数回にわたって形成と消滅、前進と後退を繰り返したであろう氷帽に起源すると考えられている。そのような状況は以後も長らく続いたが、中新世初頭(アキタニアン)にあたる約2300万年前になると南極大陸と南アメリカ大陸を辛うじてつないでいた地峡がついに切れてドレーク海峡が開かれ、南極大陸が完全に他と切り離された孤立大陸になった結果、急激な気候変動が始まった。周囲で南極環流が生じて暖流が届かず急速に寒冷化する時代の到来によって氷帽は氷床へと成長してゆき、同世の中期(ランギアン)にあたる約1500万年前には大陸のほとんどが氷床で埋め尽くされた。一方、グリーンランドの場合、新生代前期を通して氷床はほとんど無かったが、鮮新世後期以降、グリーンランド氷床が急激に形成されて、新生代の北半球で最初の大陸氷床となった。グリーンランドには、氷床が発達する前に生息していた植物の化石が非常に良好な保存状態で発見されている。
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