地中海に入るまで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 23:25 UTC 版)
8月2日(Xデイ1ヶ月前)、連合軍の地中海兵站体制の切り札的存在であった当時世界最大の石油タンカーのオハイオ (SS Ohio) を含む14隻からなる船団WS21Sがマルタ島へむけイギリスを出発した。Xデイ以前に到着しうる最後の補給船団であり、この船団が失敗した場合マルタ島が降服を余儀なくされるのは自明のことであった。また、7月31日には軽空母アーガス (HMS Argus, I49) が駆逐艦サーダニックスとバクストンに護衛されてクライド川を、空母ヴィクトリアス (HMS Victorious,R38) が軽巡洋艦シリアス (HMS Sirius,82) と駆逐艦フォアサイト、フュリー、イントレピッド、イカルスに護衛されてスカパ・フローを出撃した。 8月3日、英首相ウィンストン・チャーチル卿はモスクワに向かう途中でエジプトのカイロに立ち寄り、最前線を視察して人事異動をおこなった。同3日、ペデスタル船団に軽巡洋艦ナイジェリア (HMS Nigeria,60) 、ケニア (HMS Kenya,14) 、駆逐艦アマゾン、ダーウェント、ゼットランド、マルコム、ヴェノマウス、ウールヴァリン、ウィッシャートが合流した。同3日、スカパ・フローを戦艦ネルソン (HMS Nelson, 28) 、ロドニー (HMS Rodney, 29) 、駆逐艦アシャンティ、ターター、エスキモー、ソマリ、パスファインダー、クエンティンが出撃した。駆逐艦ペンは機関に問題があったため出撃が遅れ、4日に艦隊に加わった。 8月5日、軽巡ナイジェリアとケニアが分離され、同2隻は燃料補給のためジブラルタルへ向かった。同日、空母2隻(ヴィクトリアス、アーガス)に、西アフリカのフリータウンから軽巡洋艦フィービ (HMS Phoebe,43) 、駆逐艦3隻(ラフォレイ、ライトニング、ルックアウト)に護衛されて出撃してきた空母インドミタブル (HMS Indomitable,92) と、ジブラルタルから出撃してきた空母イーグル (HMS Eagle) が合流し、訓練のためのバーサーク作戦 (Operation Berserk) が開始された。 マルタへの戦闘機輸送を行う空母フューリアス (HMS Furious, 47) も4日にスピットファイアを載せ、軽巡洋艦マンチェスター (HMS Manchester,15) と、ポーランド海軍の駆逐艦ブリスカヴィカ (Błyskawica) に護衛されて出撃した。8月7日にフューリアスは空母2隻(ヴィクトリアス、アーガス)と合流した。 8月8日、アーガスは搭載していた804海軍飛行隊が訓練不足であった為に作戦への参加が見送られ、イギリス本国へ戻るよう指示を受けた。アーガスは駆逐艦ヴェノマウス、ウールヴァリン、アマゾン、マルコムを伴って艦隊から離れ、ジブラルタルへ向かった。8月9日-10日朝、補給船団はジブラルタル海峡を通過し地中海に入った。 連合軍大輸送作戦を察知した枢軸軍は、全力で迎撃態勢を整えた。まずサルデーニャ島とシチリア島の航空機基地に大航空部隊と偵察機を集めた。次に合計20隻におよぶ潜水艦を敵輸送船団針路上に配置し、チュニジアのボン岬半島沖合にも高速魚雷艇部隊を配備する。最後にイタリア海軍の巡洋艦と駆逐艦がシチリア海峡で敵輸送船団を阻止するという計画であった。
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