台湾での状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 10:07 UTC 版)
「チャイニーズタイペイ」の記事における「台湾での状況」の解説
蔣介石・蔣経国政権時代、中華民国政府こそが中国全土を代表する正統政府であると主張していた。中華民国(建前上、中国全土)を代表するのに、台湾を称することはその正統性を脅かすこと(「法理独立」)に繫がる。そのため当時の中華民国には「台湾」や「フォルモサ」という名義・名称は受け入れられなかった。当時中華民国では民間団体であっても全国的なものの名称に「台湾」を使うことはできず、「中華民国」、「中国」または「中華」を使用しなければならなかった。 本省人である李登輝総統が政権基盤を固め始め、「來自台灣的總統(台湾から来た総統)」としてシンガポールを訪問し「務實外交(現実外交)」を展開するようになる1989年3月以降、状況に次第に変化が見られるようになる。 2007年4月、陳水扁総統は、台湾在外ビジネス団体の帰国訪問団との会見で「中華台北(チャイニーズタイペイ)」について「奇妙な名称」とし、オリンピックで台湾の名を使用できないことについて「歴史的な要素があり、また当時もさまざまな現実を考慮してのことだった」としながらも「不公平な待遇」と述べ、台湾への改称(台湾正名運動)に意欲を見せた。 2008年4月、馬英九は総統就任を前に中央通訊社とのインタビューで世界保健機関(WHO)加盟問題について、「外交部は『中華台北』を用いるなと言うが、問題は『中華台北』以外の名称で(加盟に)成功したことがあるのか。『中国台北』というさらに受け入れがたい名称のほか、現在『中華台北』より適切な(参加可能な)ものがあるだろうか」と述べ、「中華台北(Chinese Taipei)」について国際社会で受け入れられる「適切な名称」であるとの認識を示し、台湾名義の使用は今後推進しないとの考えを述べた。 2018年11月24日、東京オリンピック・パラリンピックにおける選手団名称を「台湾」に変更し、IOCへ申請する是非を問う国民投票(英語版、中国語版)が統一地方選挙と併せて行われた。結果、反対票が賛成票を100万票近く上回り、否決された。IOCは投票前に「チャイニーズタイペイ」は1981年の協定で台湾側も合意して決定した名称であり、その内容に反した名称の変更は外的勢力の干渉とみなすとして、名称変更を認めず、変更した場合には権利を停止または剝奪する可能性があると警告していた。台湾のNOCである中華オリンピック委員会は国民投票を政治行為であると位置付け、(「台湾」への名称変更は)IOCとの協定を破ることになり、オリンピック参加資格が停止される可能性を指摘した。また、オリンピックの独立参加選手団として参加した場合、コーチなどのバックアップを受けられないため不利であるとし、出場資格を守るために断固反対する、と反対投票を呼び掛けた。 2021年8月10日、台湾のシンクタンクである台湾制憲基金会(中国語版)が台湾で実施した世論調査の結果を発表し、東京オリンピックで中華民国(台湾)の「国名」を使用できなかったことを「遺憾」とした回答が82.5%だった。台湾は、東京オリンピックでこれまで通り「チャイニーズタイペイ」の名称で参加したが、同調査によると65.1%の人が「台湾」と呼んでおり、「チャイニーズタイペイ」と呼んでいた人は25.7%だった。中華民国の国旗や中華民国国歌を使用できないことを残念に感じている人は80%以上に上った。
※この「台湾での状況」の解説は、「チャイニーズタイペイ」の解説の一部です。
「台湾での状況」を含む「チャイニーズタイペイ」の記事については、「チャイニーズタイペイ」の概要を参照ください。
- 台湾での状況のページへのリンク