取経詩話の内容
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『詩話』の内容は、唐の明皇(玄宗皇帝)の時代、皇帝の命を受け5人の弟子をつれて取経の旅に出た三蔵が、白衣を着るサルの猴行者(花果山紫雲洞八万四千銅頭鉄額獼猴王と名乗る)に出会い、その案内で昆沙門天の梵天宮へ行って、道中の加護を受ける。その後、香山寺、獅子林、大蛇嶺、九龍池、鬼子母国、女人国、西王母池、沈香国、波羅国、優鉢羅国などを旅して、天竺国へ到着し、5048巻の仏典を授けられた。帰途の香林寺で定光仏から、唯一足りなかった『般若心経』を受け取り、長安に帰国して、全員が昇天するというものである(最後の第17章では、玄奘や取経とほとんど関係のない継子いじめの話が語られる)。猴行者は銅筋鉄骨菩薩に封ぜられた。全体として、西域の珍しい国々で起きる様々な事件を、法師と猴行者の面白おかしい身振や動作、奇知に富んだ問答会話によって次々解決していく展開を特徴とする物語である。 大きな特徴として、孫悟空の原型である「猴行者」が登場して三蔵法師一行の道案内役を務め、沙悟浄の原型とみられる深沙神も登場している点が挙げられる(深沙神は前世2度も三蔵法師を食らってしまったが、今回は前非を悔いて砂漠に橋を架けて一行を通す)。また、観世音菩薩の代わりに毘沙門天が三蔵法師を守護する。猴行者は金の環のついた錫杖を得物とし、神通力で様々な妖怪と戦うなど、後の孫悟空につながる原型が見られる。伝統的な中国説話においてはサルは「猿」字で表現され、どちらかといえば凶悪・粗野なのに対し、猴行者は「獼猴」と表現され、仏教を敬う姿勢が見られることから、ここにも仏典の影響を見て取れる。 ただし猴行者は後の『西遊記』の孫悟空とは異なり、全篇に登場して活躍するわけではなく、全17章のうち第9、12、13章においては少なくとも個人としては登場せず、物語のハイライトとなる第5、6、7および11章で主に活躍する。むしろストーリー全篇に登場する中心人物は依然として「法師」すなわち玄奘三蔵である。なお、この物語では玄奘が三蔵と呼ばれるようになった由来を三度天竺へ行き、一度に一蔵ずつ、あわせて三蔵を授かったから、三蔵法師となったとしている(第17章)。ただし玄奘が深沙神に二度まで食われたため、そのうちの一蔵しか渡来しなかったとする。前代の深沙神説話が変化している様子が見られる。また王母池にさしかかった際、たわわに実っている蟠桃を見て、猴行者に盗んで参れとそそのかすなど、俗人的な性格も持つ僧侶として描かれている。
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