原因究明と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 21:05 UTC 版)
「営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故」の記事における「原因究明と対策」の解説
原因として、1車両の内の8輪にかかる重量の不均衡(輪重比)が30%に及んでいても放置されていたことや、事故が起こった箇所は半径160mの急カーブであるにもかかわらず護輪軌条(ガードレール)が無かったこと、多数の列車が集中し、レール塗油の効果が減少する朝ラッシュ時であったことなどが挙げられており、複合的要因により発生した事故だとされている。そのため、いずれか1人に刑事責任を負わせる事はできないとされた。また、レールの保守・管理を担当していた営団工務部の職員5名が管理限界を超える線路の狂いを放置したとして、警視庁から東京地方検察庁に業務上過失致死傷罪で送検されていたが、「事故の予見は困難だった」として不起訴処分となった。 事故調査検討会は緩和曲線部、低速走行、摩擦係数の増加など複数の要因が複合した乗り上がり脱線であるとしているが、安全確保という観点から次のような見解を示している。すなわち、事故発生の主原因はボルスタレス台車において輪重比の大きな狂い、副原因は営団の護輪軌条の設置基準が極端に緩かった、という点が事故調査報告書の結論の主旨である。この見解を基にして、全国の鉄道事業者に以下のような2種3項の指示を順次出した。 半径200m以下のカーブ出口のカント逓減部(緩和曲線部)への護輪軌条の設置(2000/3/16通達、即実施)。 輪重比管理値を10%以内(左右の平均値±10%)とする(2000/4中旬 - 輪重比見解報道、5月 - 実施)。 「推定脱線係数比」という管理値を導入し、基準値に満たない(基準を超える)カーブへの護輪軌条設置を義務化(最終報告書、順次実施)。 1992年に半蔵門線鷺沼車庫(東急田園都市線鷺沼駅)で2度の脱線事故を経験してから、営団では社内調査により輪重比管理の必要性が指摘されていた。現場からは輪重計の設置が要求されていたが、これは却下・放置され、半蔵門線の車両のみの輪重調整に留めた。結果として日比谷線には輪重比30%を超える車両が走ることになった。また、半径140m以下のカーブにのみ護輪軌条を設置するという営団の設置基準は極端に低かった。事故現場は半径160.1mであったことから、護輪軌条は設置されていなかった。 同じく輪重比の不均衡を原因とする東横線横浜脱線事故が既に1986年に起こっており、東急はそれ以後輪重比の±10%以内への調整、半径450m以下の全カーブへの護輪軌条の設置を行っていた。しかしながら、運輸省が全事業者に通達を出すことはなく、営団でも点検は行われなかった。 この事故の報道においては、複数要因が重なって発生した脱線事故であることをもって、国鉄が「競合脱線」と説明した鶴見事故(1963年)と比較されることもあった。また、この事故が法改正を促し、航空・鉄道事故調査委員会発足の契機にもなった。
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