協定のWTO整合性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:57 UTC 版)
日米貿易協定にアメリカの自動車関連が含まれないことから、WTOで許容される自由貿易協定の要件を満たさないのではないかと指摘がされている。これらの指摘については、日本政府は自動車関連品目がさらなる交渉の対象であり、これを含めると合意の関税撤廃率はアメリカ側で92%、日本側で84%となるとしている。上記の論説でも直ちには違反とは断言できないとしているが、今後自由化レベルの低い協定が標準となることが問題であり、定発効後速やかに第2ラウンド交渉に着手し、自動車関税も含めて今後日米協定が本格的なFTAに至る道筋を示すことが必要、「通商政策として問題なのだ。深刻なのは日本が自らルールの抜け道の前例を作って、結果的にWTOの規定を空文化してしまうこと」 と指摘している。 このような指摘がされているが、日本政府は日米貿易協定は「物品貿易について、ガット24条に整合的な協定」であるとの認識を公表している。 2020年7月6日から8日まで行われた、WTOの日本に対する貿易政策検討(TPR)会合における各国から、日米貿易協定のWTO整合性について質問があった。これに対する日本の回答は、ガット24条にいう「実質的にすべての貿易」の定義についてWTO加盟国の間に合意がないことに言及しつつ、日米貿易協定は、ガット24条に整合的と答えている。つまり「実質的にすべての貿易」の定義についての合意がない以上、どのような協定であっても当時国が整合的とすれば整合的であるとしている。 また、地域間貿易協定は、WTOへの通報が義務付けられているが、発効後7月を経過した2020年7月23日現在、WTO通報 がされていない。日本がいままで締結したEPA/FTAはほとんどが発効前に通報(経済連携協定#日本のEPA/FTAの署名者、署名日、発効日、WTO通報日参照)されているが、日米貿易協定について何らかの意図があるか単なる事務上の遅延であるかは不明であったが、下記の報道で事情が明らかになった。 2020年7月23日の日本農業新聞は、「日米貿易協定 中ぶりん WTOへ通報せず 玉虫色の合意内容が影響?」との見出しのもと、日米貿易協定のWTO通報がされていないことを報道した。日米貿易協定がWTO通報されていないことを報道した。報道では、日本国外務省北米2課の回答として「現時点で日米貿易協定はWTO通報していない。日米間で調整を続けているが交渉中なので内容は明らかにできない」となっている。この報道では、(引用始め)「現在の協定は中間段階なので通報が遅れている」との理屈らしい(引用終わり)とも伝えている。 WTOの日本に対する貿易政策検討(TPR)会合における各国からの質問で、いつ通報すると問われたが、これに対して日本は、「米国と協議中(Notification of the Japan-US Trade Agreement to the CRTA is under coordination with the U.S.)」と回答した。また2020年11月27日の参議院本会議において、日英包括的経済連携協定の趣旨説明が行われた際の質疑で、立憲民主・社民の白眞勲議員から「いつWTOに通報する」との質問があり、これに対し茂木敏充外務大臣は、「米間で調整中でありまして、調整の後、しかるべく行う予定」と答弁した。また「日米貿易協定が外務省のホームページのEPA、FTAのページに掲載されていなかった理由」についての質問には「本年十一月上旬、日米貿易協定の関連資料掲載箇所へのリンクを、我が国の経済連携協定(EPA・FTA)等の取組のページにも掲載いたしました。 日米貿易協定の外務省のホームページへの掲載を含め、経済連携協定等について、ホームページ上に、いかなる形でどのような箇所に資料を掲載し、またリンクを設けるかについては、案件ごとに総合的な観点から検討を行っております。」と答弁した。 2022年3月25日現在でも日米貿易協定のWTO通報はされていない。
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