動力ゴムのトルク・テスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 13:48 UTC 版)
「模型飛行機用動力ゴム」の記事における「動力ゴムのトルク・テスト」の解説
模型飛行機は、搭載した動力ゴムを巻き、それが戻るときに発生する回転力(トルク)を使ってプロペラを廻し、飛行に必要な推力を得ている。この回転力の大きさは、動力ゴム束の太さ(断面積)に依存するが、戻り始め(最大巻き数付近)から戻り終わり(巻き数がゼロになる直前)の間に数倍の変動がある。さらに、ゴムの品質や銘柄、温度を主とする環境条件によっても変化する。 プロペラは、フリーフライトの滞空競技種目で勝つためには最も重要とされ、その設計・製作法について研究されている。プロペラ設計の出発点となる基礎データは、それを駆動する原動機の出力特性であり、ゴム動力機の場合は組み合わされる動力ゴム束のトルク特性になる。プロペラの設計は、これを出発点として機体側の状況に適合した、効率の高いプロペラ仕様(直径、ピッチなど)を模索する作業である。このように重要な動力ゴムのトルク特性を求めるためには、以下のような測定が行われている。 動力ゴムのトルク・テスト装置は、固定端と回転端のある模型飛行機の「胴体」状のゴム取り付け機構を作業台上に固定し、回転軸からゴムのトルクを出力させるものである。回転軸にはプロペラの代わりに腕木を取り付け、腕木の先で錘かバネ秤を使って、そのときの回転力(トルク)を測定できる。この装置に動力ゴム束を取り付け、最大巻き数まで巻き込み、巻き戻しながら、それぞれも巻き数のときのトルクを測定し、記録する。 例えば、腕木の長さが10cmで、バネ秤の読みが100gならば、そのときのトルクは 100g×10cm=1000g-cm=1kg-cm になる。模型飛行機のゴム束のトルク測定に当っては、g-cm単位を用いるのが習慣である。 動力ゴムを実用最大巻き数まで巻き込んで、上記の測定を行えば、そのときのトルクは当該ゴム束の最大巻き数(Nmax)に対応する最大トルクである。それから一定巻き数(⊿N)巻き戻し、再び腕木のバネ秤を読み、トルクを測定すれば、そのトルクは巻き数(Nmax-⊿N)に相当する値になる。同様に、一定数だけ巻き戻して(Nmax-2×⊿N)、(Nmax-3×⊿N)などの巻き数に対応するトルクを読み取れば、巻き数がゼロから最大巻き数に至るそれぞれの巻き数に対応するトルクが測定できる。巻き戻す巻き数(⊿N)の大きさは、ある程度は細かいほうが望ましいが、細かすぎると測定に時間がかかり、ゴムが伸びてトルクが過小に測定される。 このようにして測定された巻き数とトルクの関係を、横軸に巻き数、縦軸がトルクのグラフに表すと、当該ゴム束のトルク曲線になる。 トルク曲線の形は一般的に以下のようになり、ゴムの銘柄などによってあまり変わらない。戻り始めのトルク値は平均トルクの4~5倍の高さで、戻し巻き数が20%(残り巻き数80%)までの間にほぼ平均トルクまで急速に低下する。この区間を「バースト(爆発)」と呼び、プロペラの回転数は平均の2倍くらい、推力は10倍近い高出力を発揮する。残り巻き数が80%のところから5%になるまでの間は、トルクが緩やかに減少し、5%のときでも平均トルクの70~80%を保っている。この期間のトルクはほぼ横這いに近いので、「クルーズ(巡航)」と呼ぶ。プロペラの回転数はほぼ一定で、出力も同様である。残り巻き数5%から0%までは、トルクはやや急激に低下してゼロに至る。 腕木の先のトルク計測点は、1回転すると半径の2π倍だけ移動するから、仕事量は(トルク×2π)になり、前述のトルク曲線グラフの縦軸を2π倍すると出力曲線が得られる。出力曲線の下側の面積、つまり出力を巻き数で積分した値が、当該ゴム束の総出力になる。総出力をゴム束の重量で割れば、動力ゴム1g当たりの出力になり、この値が大きいゴムが優れたゴムである。 現在のFAI銘柄のゴムの優秀なものは1g当たり1kg-mを蓄積するといわれ、これより高い1.2kg-m等の数値も公表されている。これに対し、前節で採りあげた1970年当時のピレリ・ゴムは0.7~8kg-mといわれ、戦前のダンロップ銘柄などは0.6kg-mくらいであったという。輪ゴムは、模型飛行機競技用の専門ゴムではないので、同じ水準で比較すべきではないが、16番輪ゴム(重量0.15g、長さ62mm)を測定した結果、切断係数8~8.5、重量1g当たりの蓄積エネルギー0.4~0.5kg-mの値が得られた。
※この「動力ゴムのトルク・テスト」の解説は、「模型飛行機用動力ゴム」の解説の一部です。
「動力ゴムのトルク・テスト」を含む「模型飛行機用動力ゴム」の記事については、「模型飛行機用動力ゴム」の概要を参照ください。
- 動力ゴムのトルク・テストのページへのリンク