動力および構造物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/04/21 13:58 UTC 版)
「シティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道」の記事における「動力および構造物」の解説
トンネルの断面がとても小さいことと、十分な換気を行うことが難しいことから、他のロンドンの地下鉄で導入されていたような蒸気機関車で運転することは、深いところを走るチューブでは不可能であった。グレートヘッドが先に建設したタワー地下道のように、この路線でも当初は地上に設置した機関でケーブルを牽引し、トンネル内を一定速度で走らせることを想定していた。1884年の法律の5章では、以下のように指定していた。 地下鉄の運行は、パテント・ケーブル・トラムウェイ会社のシステム、またはその時点で商務省が承認した、蒸気機関車以外の何らかの手段によるものとする。 パテント・ケーブル・トラムウェイ会社は、1873年にサンフランシスコで初めて発明され運行された、アンドリュー・ハリディー(英語版)のケーブルカーシステムの権利を持っていた。このシステムでは、列車は自由に開閉できるクランプを用いてケーブルに接続されており、これによりケーブルを止めたり、同じケーブルに牽引されて走行している他の列車の動きを妨げたりすることなしに、車両をケーブルから切り離して止めたり、再度繋いで走らせたりすることができた。エンドレスのケーブルは独立して2組用意される予定となっており、シティ駅とエレファント・アンド・キャッスルの間では10マイル毎時(約16 km/h)、そして勾配が少ないエレファント・アンド・キャッスルとストックウェルの間では12マイル毎時(約19.2 km/h)で運転されることになっていた。しかし、追加の法律で認められた延長路線のために、ケーブルで運行するシステムの実現可能性には疑問が生じた。 このシティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道関連の問題が、1888年にパテント・ケーブル・トラムウェイ会社が倒産する原因であったとされている。しかし、初めからずっと電気鉄道に関しては検討されており、また1886年にトンネルの建設が始まって以来、技術的には大きく進歩していた。このため、シティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道の会長のチャールズ・グレイ・モット (Charles Grey Mott) は電気鉄道へ変更することを決定した。1896年に開通したグラスゴー地下鉄のように、他にハリディーの特許を使ったケーブル牽引式で設計されていたものはそのままであった。 採用された動力は、列車の下部にある第三軌条から供給される電力で走るもので、寸法の問題から中央より西側にオフセットして第三軌条が取り付けられていた。これ以前の10年間にも電気で列車を走らせることは実験されてきており、また小規模な運行は既に実現していたが、シティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道は世界で初めて電気で走る大規模な鉄道であった。メイザー・アンド・プラット(英語版)製の電気機関車が第三軌条から500ボルト(正確には、北行のトンネルでは+500ボルト、南行のトンネルでは-500ボルト)を集電し、何両かの客車を牽引して走った。車両基地と発電所がストックウェルに建設された。発電機の容量不足のため、駅の照明は当初はガス灯であった。車両基地は地上に設けられており、保守作業を受ける車両は当初は斜路を通じて地上に引き上げられていたが、転落事故が発生したため、すぐにエレベーターが設置された。実際のところ、機関車も客車も大規模な保守作業の時にのみ地上に送られていた。 地上にある建物の下にトンネルを建設する権利を購入しないで済ませるために、費用を負担せずにトンネルを建設することができる道路の下を通るようにした。路線の北側では、テムズ川の下を深くくぐり、またシティ・オブ・ロンドンの中世以来の街路の下を通らなければならないことで、キング・ウィリアム・ストリート駅へ通じるトンネルの配置は制約を受けた。キング・ウィリアム・ストリート駅は川に近かったために、その西側ではかなり急勾配のトンネルになった。狭い通りの下に建設したため、他の場所では横に2本並べてトンネルが建設されていたが、キング・ウィリアム・ストリート駅の近くでは上下に2本並べられ、郊外へ向かう方向の線路が下を通るようにされた。2本のトンネルは駅の直前で合流し、駅は1つの大きな断面のトンネル内に設けられて、1本の線路の両側にプラットホームを備えていた。もう一方の終点であるストックウェル駅では、やはり1本の大きなトンネルに駅があったが、中央のプラットホームの両側に線路が配置されていた。
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