劣化現象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 02:37 UTC 版)
鉛蓄電池は放電し切ると、負極板表面に硫酸鉛の硬い結晶が生じるサルフェーション(白色硫酸鉛化)と呼ばれる現象が発生しやすくなる。鉛蓄電池では電極の表面積を広げるために表面が粒状となっているが、サルフェーションにより硫酸鉛が表面に付着して表面積が低下し起電力が低下する。硫酸鉛の結晶は溶解度が低く、一度析出すると充放電のサイクルに戻ることができない。サルフェーションが発生した鉛蓄電池は充電すると電圧は回復するものの内部抵抗が大きくなり、実際使用できる電池容量が低下する。バッテリー劣化はバッテリーテスターでCCA(Cold Cranking Amperes)値を計測することで判断できる。CCA値は-18℃で放電させた場合端子電圧が30秒間に7.2Vまで低下する場合の放電電流(A)を表している。 サルフェーションを起こした鉛蓄電池の機能回復をうたう添加剤があり、多くは炭素微粉末やゲルマニウム、リグニン、特殊ポリマーなどを使用しているが効果は限定的である。パルスを併用した充電でサルフェーションを除去する装置があるが、電極が劣化したり脱落したものには無効である。 他には、正極板の二酸化鉛が使用していくにつれて、徐々にはがれる脱落と呼ばれる現象が発生し、これが電池底部にたまって陽極と陰極をショートした形となって電圧が低下する。セル1個の電圧が2ボルトであるので、ショートしたセルの数だけ2ボルト単位で電圧が低下するのが特徴である。電解液の溶媒である水は、蒸発や充電時に水素と酸素に電気分解されることによって液量が減少する。液面が下がって電極と電解液の接触面積が減少すると起電力が低下するため、鉛蓄電池には液面高さを示す表示がされていて、下限に達した際には精製水を補充する必要がある。電解液が不足(液枯れ)状態では、充電中や衝撃等による火花(ショート)が発生し、水素ガスに引火すると爆発事故となる。 電動フォークリフトなど、多数の鉛蓄電池を日常的に使用する場合に、わずらわしい補水作業を簡単にするため、蓄電池メーカーはオプションで一括補水システムを用意している。
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