分数量子ホール効果
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「チャーン・サイモンズ理論」の記事における「分数量子ホール効果」の解説
分数量子ホール系に対して2+1次元のチャーン・サイモンズ理論が初めて用いられたのは1989年の事である。物性物理の文脈では、チャーン・サイモンズ・ゲージ場の導入は、多体系の作用に対する特異ゲージ変換によって正当化される。チャーン・サイモンズ理論が分数量子ホール系の良い記述として考えられている理由の一つに、一様密度の平均場解としてラフリン波動関数を含む事が挙げられる。ラフリン波動関数は、奇数分母のランダウ指数の分数量子ホール系の非常に良い近似基底の一つ(ロバート・B・ラフリンはこの波動関数の発見によって1998年のノーベル物理学賞を得た)である。しかしながら、偶数分母の分数量子ホール系の良い記述になっているかどうかは、2013年現在でも解決していない。また、チャーン・サイモンズ理論の励起状態として、チャーン・サイモンゲージ場の揺らぎが渦状になり、渦度が量子化する状態がある。チャーン・サイモンズ理論から予言される興味深い状態として、エニオンの存在が挙げられる。エニオンは非可換統計に従う粒子だが、チャーン・サイモンズ理論はエニオンの存在を予言する。もちろん、物性物理においては、チャーン・サイモンズ理論は有効理論であるため、チャーン・サイモンズ理論がエニオンを記述したとしても、それは、"エニオンの様に見える"だけであるが、この様な状態を利用して、量子計算を行おうという試みがある。例えば、5/2の分数量子ホール系が実現可能なエニオンの候補として考えられている。
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分数量子ホール効果
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「量子ホール効果」の記事における「分数量子ホール効果」の解説
近年の試料の品質の向上に伴い、種々のヘテロ接合などに於いて2次元電子系が実現されている。1979年に富士通の三村高志らによって高電子移動度トランジスタ(HEMT)が開発された。当時は作動原理は完全には解明されていなかったが、1982年、ダニエル・ツイ、ホルスト・ルートヴィヒ・シュテルマー、アーサー・ゴサードらはこの電子系に対して強い磁場(>10 T)を加え、1 K程度以下にまで冷却して電気抵抗率 ρxx, ρxy を測定したところ、従来の整数量子ホール効果で見られた、ホール抵抗率 ρxy が平坦な領域(以下これをプラトーとよぶ)のほかに、新たなプラトーを発見した。そこにおける抵抗率からホール伝導率 σxy を計算したところ、 σ x y = − p q ⋅ e 2 h {\displaystyle \sigma _{xy}=-{\frac {p}{q}}\cdot {\frac {e^{2}}{h}}} を得た。ここで p, q は整数であり、q が3以上の奇数の場合(1/3, 2/3, 1/5, 2/5, 3/5, 2/7など)を分数量子ホール効果と名づけた。 整数量子ホール効果の原因は、不純物ポテンシャルによる電子の局在化であるが、分数量子ホール効果は電子間のクーロンポテンシャルが不純物ポテンシャルに打ち勝つ場合に起こる。このため、分数量子ホール効果が観測されるのは、試料は不純物を極力減らし、ヘテロ接合界面が良質の試料に限られる。 1998年にホルスト・ルートヴィヒ・シュテルマー、ダニエル・ツイと理論物理学者であるロバート・B・ラフリンにノーベル物理学賞が授与された。
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