光学特性と色
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 08:34 UTC 版)
ダイヤモンドは通常、そのきらめき(ブリリアント)を引き出すためブリリアントカットが施される。ブリリアントとは、石に入射した光が全て石の底面で反射し白く輝くことであり、それに加え虹色のカラフルな光の明滅(ファイアと呼ばれる)を見せる。この2段階にわたる光の芸術は石に施されたカットによるものだが、カットでそうなるのはダイヤモンドが2.417(ナトリウムのD線波長589.3nm下において)という高い屈折率と0.044(ナトリウム光のB線~G線間の測定)という、(白色光を七色に分光できるレベルの)高い分散値を有するからである。であるから、ダイヤモンド類似石の屈折率と分散値が本物のそれより著しく低ければ、輝きが鈍って見える、あるいは「死んでいる」といった表現が似合うかもしれない。逆に屈折率と分散値が本物のそれより高すぎれば、どこかまがまがしく輝き、美しいというよりむしろしつこいと感じるだろう。 最近では、ダイヤモンドの屈折率と非常に近い値を持つチタン酸バリウム、キュービックジルコニアなどの模造ダイヤモンドが世に出回るようになってきており、これらは屈折率がダイヤモンドと非常に近いために、ブリリアンカットを施すと肉眼で見分けることは困難である。 なお、屈折率と分散値を直接測定するのはあまり意味がない。というのも、ごくふつうに出回っている宝石用屈折計は測定可能な上限値が1.81までとなっているからである。だが、メーカーの中には赤外線をどれだけ反射するかを測定することで、間接的に石の屈折率を測定する反射率計を考案したところもある。 光学特性もまた重要な要素である。ダイヤモンド及び等軸晶系(一部ガラスのようなアモルファス材料を含む)の石は等方性、つまり媒質内に入射した光は結晶の向きに依存せず、同じ振る舞いを見せる性質を有している。対するに、多くの石は異方性を有しており、複屈折という、光軸を除いたあらゆる方向から入射した光が2方向に分光される性質を示す。複屈折はたいがい肉眼で検知可能で、複屈折を有する石は背面ファセットの稜線や内包物が二重に見える。 ダイヤモンドは、UV-A (365nm) 光下において、青、黄、緑、藤色、赤など様々な強い蛍光を発する。ほとんどの場合蛍光は青であるが、そうした石は黄色い燐光も発する。これらは宝石の種ごとに特有の組み合わせであると考えられている。多くのダイヤモンド類似石とは対照的に、本物はUV-C光下においては通例ほとんど蛍光しない。同様に、ダイヤモンド類似石の多くが人工合成石であるので、その光学特性も似通ったものになってしまう。ダイヤモンドをたくさん付けた指輪があるとすれば、その石それぞれが色や強さなどにおいて、異なった蛍光を発するのがふつうである。どの石も同じような蛍光を発するのであれば、それらはダイヤモンドではない可能性が高い。 無色とされるダイヤモンドの多くは、実際にはわずかに黄ばみ、もしくは茶色味を帯びている一方で、ダイヤモンド類似石はダイヤモンドのカラー用語でいうところの“D”クラス、つまり本物でも滅多にお目にかかれない完全に無色透明の石がごく普通に見られる。ゆえに、この手のあまりにも旨過ぎる話にはくれぐれもご用心すべきである。でも、と、なると、ファンシーダイヤモンド(無色透明~薄い黄色・茶色ではない、色の付いたダイヤモンド、カラーダイヤモンド)の偽物と本物の判別は一層難しいように思われるのだが、ダイヤモンド類似石で出せる色はほとんどが似せているだけである。無色透明も含めた多くのダイヤモンドを直視型分光器で観察すると415nm帯に特徴的な暗線スペクトルというものが見られる。人工合成された類似石にはしばしば不純物、具体的には希土類元素が意図的に混ぜられており、それらは本物には出るはずのない暗線スペクトルになって現れる。 本物のダイヤモンドにはしばしばその内外部に欠陥やゴミが見られ、その多くは格子欠陥と他の固体鉱物結晶である。人工合成石には欠陥やゴミがまったく見られず、例えあったとしてもそれは製造過程で紛れ込んだ、いわば製造工程上の特徴といったものである。天然の類似石にとりわけよく見られる欠陥は、本物のダイヤではほとんど観察されない羽毛状の液体である。ダイヤモンドのカットでは、しばしば原石の結晶面をそのまま残しておく場合がある。こうした面はナチュラルと呼ばれ、ふつうカット名称でいうところのガードル部分がそれに当たる。そういった場所にはトリゴン(又はトライゴン、trigon)と呼ばれる逆三角形の窪みが見られるが、これは格子欠陥に由来すると言われており、こういった印は本物のダイヤモンドにしか見られない。
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