先天性筋線維タイプ不均等症
上記何れの疾患でも共通な重要な病理学的所見はタイプ1線維がタイプ2線維より小径で、タイプ1線維の数が正常上限の55%以上を占める(タイプ1線維優位:type 1 fiber predominance)ことです。さらに、筋線維径は全体に細く、未熟で未分化なものが多く存在します。筋線維タイプ分布の異常と未熟性が筋力、筋緊張低下の原因と考えられています。
b.臨床症状
先天性ミオパチーはどの病気でも、乳児重症型、良性先天型、成人発症型の3型に分けられています。上記疾患(ネマリンミオパチーとかセントラルコア病とか)は病理学的には互いに明らかに所見が異なり、また遺伝子座も異なっているのに、臨床症状はきわめてよく似ています。たとえばネマリンミオパチーの患者さんと先天性筋線維タイプ不均等症の患者さんをみても、よく似ていて臨床的には鑑別が困難です。
1)乳児重症型(severe infantile form)
最もよく知られているのはネマリンミオパチーとミオチュブラーミオパチーです。ネマリンミオパチーでは多くは、常染色体劣性遺伝をとると考えられています。重症型の10%位にアクチン遺伝子の変異があるようです。前に述べたように、ミオチュブラーミオパチーの場合はX連鎖劣性遺伝をとるので、ほとんどが男児です。
新生児期からの呼吸困難、哺乳力低下があり、人工換気、経管栄養を必要とします。細長く、表情のない顔をしていて、高口蓋を認めます。手足の動きはほとんどみられません。手、足関節の拘縮、先天性股関節脱臼をしばしばみとめ、腱反射は消失しています。予後は不良で、大多数は1歳までに死の転帰をとります。
2)良性先天型(benign congenital form)
先天性ミオパチーの大半の患者さんはこの良性先天型に属します。乳児期に発達の遅れがあり、筋力・筋緊張が低下したいわゆるフロッピーインファント(floppy infant)のことが多いです。歩行開始も遅れ、1歳半を過ぎることが多いです。歩行開始後も走れない、階段の昇降に手すりがいるなど筋力低下は持続します。なかには症状がほとんどなく、よほど専門的な知識を持つ医師でしか診断できないような軽症例もあります。筋力低下は非進行性か、あるいは進行してもとても緩徐です。
筋力低下は全身にありますが、頸部屈筋が弱い(寝ていて頭がもちあがらない)のが特徴的です(図28)。顔面罹患がありますので、細長い顔で表情に乏しく、高口蓋があります。ただし、セントラルコア病では顔面筋罹患は少なく、正常と変わらないことが多いです。
![]() | 歩行は可能であるが、走れない、階段昇降困難を認めて診断のため来院した。 呼吸筋が弱く、さらに寝た位置から引き起こしても頭がついてこない(頸部屈筋の筋力低下)があるので先天性ミオパチーを疑われ筋生検し、診断が確定された。 |
図28:ネマリンミオパチー良性先天型 |
関節拘縮はしばしば病初期から認めます。セントラルコア病では四肢筋の筋力低下は軽度なのに、強い脊柱変形(側彎)をみることがあります。
検査所見では、疾患特異的異常はありません。血清クレアチンキナーゼ(CK)値は正常ないし軽度上昇、筋電図は正常ないし筋原性所見を示します。
3)成人型(adult onset form)
ネマリンミオパチー、ミオチュブラーミオパチー(中心核病)での報告があります。良性先天型で幼少期にはきわめて症状が乏しく、成人になって急性増悪したものと、成人発症の2型があると考えられています。成人発症のものは病理所見だけで診断されていますので、良性先天型のような遺伝性はないのでしょう。原因も炎症、中毒などが考えられています。
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