先天性疾患、遺伝子変異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 11:04 UTC 版)
「チェルノブイリ原発事故の影響」の記事における「先天性疾患、遺伝子変異」の解説
ベラルーシのホメリ州にあるチャチェルスク地区とウクライナのキエフ州にあるPolessky地区において1983年から1990年までのデータを用いて行われた調査では、事故後、新生児に低酸素症、新生児呼吸窮迫症候群、血液疾患などの罹病率の増加が見られ、チャチェルスク地区では先天性疾患の顕著な変化は見られなかったが、Polessky地区では6.9%から24%へと増加を示した。この研究の結果、母親、胎児、子供の健康は妊娠女性と子供の各器官と体組織の適応異常や病理学的異常とともに放射線による著しい影響を受けていることが結論づけられた。 ベラルーシの放射能汚染地域における胎児と新生児の先天性疾患に対する国の遺伝子モニタリング (Genetic monitoring) のデータを用いた調査によると、1982-1985年に比較して、事故以降の1987-1994年では、多発奇形、多指症、四肢減形成の頻度の増加が見られた。ベラルーシの放射能汚染地域におけるコーホート研究による1982年から1990年までの新生児のデータ結果は、放射線被曝と貧血症、先天性疾患、周産期死亡の発生の間に、潜在的に強い関係があることを示している。 放射性プルームの通過に伴う短期的な被曝影響を調べるために、ベラルーシの先天性奇形国家登録から1981-2001年のダウン症候群のデータから時間的傾向を分析した研究によれば、1987年1月にダウン症候群の有意なピークが観測されたが、長期的な傾向は示さなかった。ピークの発生時期は、高線量率の放射性プルームの通過時期と、妊娠期の卵形成における放射線感受性の段階と一致することから、放射性プルームによるダウン症への影響が示唆された。 1999年に、ウクライナの人口に基づく奇形監視システム (Ukrainian population-based malformations surveillance system) が確立され、2000-2006年を対象にした調査によると、慢性的な放射能汚染地域にあるポリーシャ地域のリウネ州では、神経管欠損症 (Neural tube defect) の割合が持続的な上昇を示しており、結合双生児や奇形腫の上昇、および小頭症 (Microcephaly) や小眼球症も同様に上昇を示した。その後の研究では、被曝経路を特定するために、344人の女性に対して食事や活動の調査が行われ、その結果、アルコールの摂取量は低く、アルコール単独では、観測された先天性疾患の上昇を説明できなかった。被曝の主な経路は、特にキノコやベリーなどの野生の食物や、その地域の食材(特に、ミルク関連)であることが分かり、さらに、女性は畑で草を燃やしたり、料理や暖房のために木を燃やすことで、吸引を介した被曝を受けていた。 ウクライナやベラルーシの農村部に居住し暴露した家族を調べたところ、放射線の影響による遺伝子の変異として、生殖細胞におけるミニサテライト (Minisatellite) 変異率の上昇が観測されている。
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