先天性多毛症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 15:19 UTC 版)
先天性の多毛症は遺伝子の変異により引き起こされ、後天性のものとは異なり非常にまれである。先天性多毛症はつねに出生時に存在している。 毳毛性多毛症(hypertrichosis lanuginosa) 先天性毳毛性多毛症の症状は出生時にすでに顕著である。先天性毳毛性多毛症の新生児は薄い毳毛(英語版)に完全に覆われている。通常の状況では胎児の毳毛は生まれる前に抜け落ちて軟毛(英語版)に生えかわるが、先天性毳毛性多毛症の場合は出生後も毳毛が残り続ける。手の平と足の裏、粘膜は影響を受けない。罹患者が年齢をかさねることで毳毛が薄くなり、多毛症の症状が限られた範囲にしか残らないことがある。 汎発性多毛症(generalized hypertrichosis) 先天性汎発性多毛症は男性の場合、顔面と上半身に過剰発毛を引き起こす。一方で、女性の場合の症状は男性に比べると軽度で、また左右非対称な発毛になる。手の平と足の裏、粘膜は影響を受けない。 終毛性多毛症(terminal hypertrichosis) 先天性終毛性多毛症は、色素を多量に含む終毛(英語版)が罹患者の全身を覆っていることで特徴付けられる。この症状はしばしば歯肉増殖症をともなう。先天性終毛性多毛症の罹患者は全身に太く黒い体毛をもつため「狼男症候群」(werewolf syndrome)という用語の由来となった可能性が高い。この症状をもつ人々はその特異な外見からサーカスの出演者として働くこともあった。 限局性多毛症(circumscribed hypertrichosis) 先天性限局性多毛症の関連症状は上肢での太い軟毛の発毛である。限局(circumscribed)はこの類型の多毛症が身体の特定の部位、この場合は上肢の伸側面に限定されていることを示す。先天性限局性多毛症の一種、へアリーエルボー(毛深い肘)症候群では肘とその周辺に過剰発毛が見られる 。この類型の多毛症は出生時に症状が認められ、症状は年齢をかさねることで顕著になるが、思春期には沈静化する。 局所性多毛症(localized hypertrichosis) 先天性局所性多毛症は局所的に体毛密度と体毛の長さを増加させる。 母斑性多毛症(nevoid hypertrichosis) 母斑性多毛症は出生時に症状が認められる場合もあるが、年齢をかさねることで顕在化することもある。この類型の特徴は皮膚の一点での終毛の過剰発毛だが、その他の疾病はともなわないことが多い。
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