偏向性
偏向性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 09:25 UTC 版)
塾講師の小泉祐一郎は、ジョン・ケネス・ガルブレイスやレスター・C・サロー(英語版)といった経済学者が経済学賞を受賞できない理由は、彼らの著作がジャーナル・アカデミズム的ではなく「政治経済学的」だからであるとしている。経済学者の石井信彦は、経済学賞は文学賞・平和賞と同様、政治的に偏向しており、「政治経済学的」であったり、主流派を無視したり反抗的であれば受賞できないことは実証されているとしている。 ジョーン・ロビンソンは、14年間にわたって何度か候補に挙がったが、受賞することなく1983年にこの世を去った。ロビンソンは、政治色が強過ぎるため、受賞を辞退する恐れがあったために、経済学賞受賞を逃したと一部で憶測された。選考委員会の委員長を務めたアサール・リンドベック(英語版)は「賞を辞退する恐れもあったし、脚光を浴びる機会に乗じて主流派経済学を批判する可能性も考えられたからである」と述べている。 トーマス・カリアーは「偏見の強いノーベル賞選考委員会は、知名度・人気も抜群の20世紀の経済学者をもう一人(一人はジョーン・ロビンソン)、賞の対象から外してしまった。20世紀を代表する経済学者の一人ジョン・ケネス・ガルブレイスである。リベラル過ぎる、数学的でないなど理由はどうであれ、巨匠ガルブレイスの名が無いことは、受賞者名簿の不備を際立たせる一例である」と指摘している。 根井雅弘は「経済学賞の受賞者たちが、極めて有能な研究者であることは間違いない。ただ、経済学賞が主流派経済学者に偏って授賞されており、『異端派』はほとんど排除されている」「経済学賞の選考委員会は、左翼系の学者を排除していると憶測されている。もちろん、これには確固たる証拠はないが、実際の受賞者の顔ぶれを見ると憶測を招きかねない状況はあるのは確かである」「相対立する理論が存在する場合、どちらか片方にだけ経済学賞を与えるのは誤解を招きやすい」と述べている。また根井は「経済学賞を廃止すべきとは言わないが、もっと多様な経済思想に寛容な人選になったほうがよい」「社会科学の一分野である限り、経済学は価値観・イデオロギーからまったく無縁とはなりえない」と述べている。 経済学者の小島寛之は「ノーベル経済学者は政治的であるとよく言われるが、そんなことを言い出したらノーベル平和賞のほうがずっと政治的である」と指摘している。 ノーベル賞選考委員会は当初グンナー・ミュルダール単独でに経済学賞を贈るつもりであったが、経済に対する政府の幅広い干渉を容認するミュルダールの立場とバランスをとるべきとの声に押されて、フリードリヒ・ハイエクとの共同受賞が決まったとされている。ミルトン・フリードマンは「非常に特異な組み合わせであり、左派と右派である」と指摘している。
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