保護活動と人工繁殖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 07:32 UTC 版)
「ツシマヤマネコ」の記事における「保護活動と人工繁殖」の解説
このようにツシマヤマネコは絶滅の危機にあったため、1994年、種の保存法により国内希少野生動植物種の指定を受けた。環境庁(現・環境省)は同法に基づき、1997年に対馬北部の上県町に対馬野生生物保護センターを開設し、ツシマヤマネコなどの生態調査、交通事故被害やFIV感染した個体の保護、住民への環境教育や啓発活動などを行っている。 また、種の保存法の指定を受けて、福岡市動植物園で人工飼育、繁殖計画が開始されている。同園では2000年と2001年にそれぞれ1頭の子ネコが誕生しており、その後も多くの子ネコが誕生し飼育されている。2004年3月から、加齢のため野生に帰せず繁殖もできないオスとメスの個体それぞれ1頭の一般公開を始めた。 さらに、環境省は2006年9月、飼育を分散し繁殖を目指すことにし、新たに井の頭自然文化園とよこはま動物園ズーラシアにオス・メス1頭ずつを移送し飼育し繁殖の試みを始めた。分散飼育の目的は感染症や災害等発生時のリスク回避、および遺伝的多様性の維持である。その後上記に加え、2007年11月に、富山市ファミリーパーク、つづいて九十九島動植物園、東山動植物園、盛岡市動物公園、沖縄こどもの国、京都市動物園と分散飼育を実施する園館を増やしていたが、繁殖の停滞と飼育下繁殖個体の高齢化が問題となった。このため、環境省は2013年に繁殖の可能性が高い年齢の個体を拠点となる園へ集約し、2014年に福岡市動植物園および九十九島動植物園で5年ぶりに繁殖に成功させている。 将来的には環境省が対馬市南部の鮎もどし公園に開設した対馬自然保護官事務所厳原事務室の野生馴化施設に動物園での繁殖個体を収容し、野生復帰をさせる計画があるが、このような状況のため移動させられる個体がないのが現状である。 このほか、国指定鳥獣保護区の設置など生息地の保全措置、地元自治体やNPOによる保護啓発活動が行われている。 2004年10月には、インターネットオークションにツシマヤマネコの剥製を出品した男性と、これを落札して譲り受けた中学生とその父親が、種の保存法違反容疑で、長崎県警から長崎地検に書類送検されている。 2013年10月18日、対馬市に住む男性が自宅で飼育していたメスのツシマヤマネコの治療を対馬野生生物保護センターに要請し、同センターで治療したが約9時間後に死亡した。この個体は15歳から16歳と推定され、老衰死とみられている。15年ほど前にけがをしているところを保護し、そのまま飼育していたという。ツシマヤマネコを一般の家庭で飼育するのは種の保存法に抵触するが、悪質性が低いとして男性を厳重注意にとどめている。ただし、男性の行為自体は違法であったものの、野生での寿命が8-10年程度と言われるツシマヤマネコが15年以上にわたって飼育された例は大変貴重で過去に2例しかなく、対馬野生生物保護センターでは今後の参考に男性から飼育方法などを聞き取るという。 2020年3月18日、 よこはま動物園ズーラシアにおいて国内初の人工繁殖に成功。
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