保護法益をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 00:53 UTC 版)
「わいせつ物頒布等の罪」の記事における「保護法益をめぐる議論」の解説
本条の保護法益については、次のように各説が対立している。 性道徳・性秩序の維持 社会環境としての性風俗の清潔な維持 国民の性感情の保護 商業主義の否定 見たくない者の権利ないし表現からの自由 青少年の保護 女性差別の撤廃 性犯罪の誘発防止 法の統一性(法解釈の変遷) チャタレー事件など、判例では「わいせつ物は性道徳・性秩序を維持するために処罰される」と考えるのであるが、これに対しては法による道徳・倫理の強制であり、憲法の精神的自由に反するのではないかという批判がある。 そこで、ポルノカラー写真誌事件の団藤重光裁判官の補足意見などは、本条は清潔な環境を保護するためにわいせつ物を処罰するものだという観点に立ちつつ、それだけでは重罰の根拠を説明できないので、性感情・見たくない者の自由・青少年の保護・商業主義の否定などの観点をも含んだものだと捉える。 これに対して、見たくない者の自由や青少年の保護だけに本条の処罰根拠があると考える論者もいるが、そうすると、わいせつ物を見たくて見る大人に頒布・販売する行為は処罰する必要がない、という結論になるが、最高裁は、このような立場はとっていない。 「ポルノカラー写真誌事件」も参照 以上のような伝統的な議論に対して、最近では、ラディカル・フェミニズムの観点から、わいせつ物は女性差別や性犯罪を助長するものであるから、そのような弊害を防ぐために処罰するのだ、と捉える論者も出てきている。 なお、忘れがちだが、人権は「見たい者」にも「見たくない者」と同様に存在している。この為、片方の権利を蔑ろにする事はれっきとした人権侵害にあたり、意図的に行えば差別に該当する可能性もある。また、現状ではゾーニングやレイティングによる区分陳列の普及で両者への配慮は十分為されているという見方もあり、現行の条文が過不足無く社会風紀に適しているとは言い切れない側面がある。
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