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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 15:10 UTC 版)
犬は成熟した卵子を採取するのが困難なため、もっともクローニング困難な動物だと考えられていた。受精可能な卵子を採取できるのは年間わずか数週間の発情期のみで、その時期を予想する方法も知られていなかった。また卵子の成熟機構もほかの動物種と異なり、卵巣内で成熟する代わりに、早期に排卵されて卵管内を移動しながら48から72時間かけて成熟する。卵子を体外で成熟させるには困難が伴うため、成熟のタイミングを見計らって卵管腹腔口から卵子を抽出することを余儀なくされた。排卵時期と発情周期を予測するため、ドナーは常時モニタされていた。 クローン胚の作成には羊のドリーと同じSCNT法(Somatic cell nuclear transfer)が用いられた。成熟卵子から核を除去して成犬の細胞を代わりに埋め込み、電気刺激と化学反応によって細胞融合を誘起する。融合に成功した卵子を活性化させ、得られた胚をドナーの卵管もしくは子宮角に再度移植する。123頭のドナー兼代理母に対して1,095個の胚が移植され、そのうち3頭が妊娠した。着床に至った胚は、活性化後4時間以下の初期段階で移植されたものに限られた。クローン胎児の1匹は流産し、もう1匹は誕生後3週間で肺炎により死亡したため、スナッピーが唯一の成功例となった。スナッピーの妊娠期間(60日間)、出生体重(530 g)はいずれも標準的なものだった。14週齢のスナッピーは「元気いっぱいで健康な、普通のやんちゃな子犬」だと伝えられた。 1,095個の胚から最終的に2頭のクローン犬が誕生したことで成功率は0.2%以下となり、約10%だった牛や豚と比べて顕著に低かった。スナッピーのクローニングが成功するまで、3年近い研究期間にわたって15人のチームによる集中的な取り組みが必要であった。 黄らは遺伝子ドナーの犬種を選ぶのにも細心の注意を払った。共同研究者シャッテンによれば、アフガン・ハウンドが用いられたのは、他の犬種より遺伝子プロファイルが純粋であることから、同じ遺伝子を持つ個体を識別しやすいためだという。クローンは必ずしも外見的にオリジナルと似るとは限らないが、クローニングの成功を印象付けるため瓜二つな子犬を望んだのである。配慮が功を奏してか、誕生したスナッピーは遺伝子ドナーと酷似していると伝えられた(スナッピー、遺伝子ドナーおよび代理母の写真)。そのほか、アフガン・ハウンドが適度な体格と穏やかな性格を持ち扱いやすいことや、優美な外見も理由に挙げられた。スナッピー誕生の報道に対して、犬の知性に関する著作を持つスタンリー・コレン(英語版)はアフガン・ハウンドが「知的とは言えないが、見た目は美しい」犬種だと述べ、クローニング支持者が外見を最重要視する傾向を批判した。
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