人間の内面への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 12:21 UTC 版)
宇宙飛行士としての体験は、世界観・人生観・宗教観といった人間の内面にしばしば大きな影響を与えるとされるが、特に、宇宙空間を直接体感する船外活動(宇宙遊泳)は、宇宙船や宇宙ステーションといった環境内での活動と比べて、人間の内面へのインパクトが格段に大きいとの体験談が語られている。例えば、月面着陸と宇宙遊泳の双方の経験を有するジーン・サーナンは、「宇宙船の中に閉じ込められているのと、ハッチを開けて外に出るのとでは、全く質的にちがう体験だ。宇宙船の外にでたときにはじめて、自分の目の前に全宇宙があるということが実感される。宇宙という無限の空間のどまん中に自分という存在がそこに放り出されてあるという感じだ。そのときのセンセーションにくらべれば、地球軌道を離れて月に向かうとか、月の上を歩くといったことは、そう大したことではないといえるくらい、それは大きなちがいだ」と語っている。 日本人宇宙飛行士として初めて船外活動(宇宙遊泳)を行った土井隆雄も、宇宙が自分たちを呼んでいるような「何とも言いようのない感じ」を体感。その感覚が何であったかを追い求める中で、アフリカの森に住んでいた人類の祖先がサバンナの草原へと降り立って活動範囲を広げていったように、人類の活動領域・視点が地球上にとどまっていた段階から、月や火星を含めた宇宙規模での活動・思考へと向かう過程にあることに伴う喜びと畏怖のまじりあった混とんとした感情であると解釈するに至っている。また、船外活動(宇宙遊泳)をこれまでに複数回行った野口聡一も、宇宙船内から見る宇宙はあくまで新幹線内から見る外の景色のようなものにとどまり、船外活動の際に「触感で感じる」のは圧倒的に違う体験であるとし、中でも地球という存在について、「ふと目の前にある地球が一個の生命体として-ある意味では自分と同じ生命体として-宇宙に存在しており、・・・そこに一対一のコミュニケーションが存在するかのような気持ちになった」と描写するとともに、太陽光の反射という物理現象だけでは説明し切れない命の「輝き」のようなものを感じたとしている。
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