人員過剰予想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:00 UTC 版)
医薬分業の進展により薬局等での需要が増えているが、医薬分業率は70から80%で頭打ちになると予想されること、2009年の登録販売者制度の導入により第二類および第三類一般用医薬品を販売するには登録販売者がいれば薬剤師の常駐が不要となること、等から薬剤師の需要は頭打ちになるのではないかとの意見がある。もともと、人口1,000人あたりの薬剤師数は1.21と、先進国中では最も高い。厚生労働省は「薬剤師問題検討会」を組織し2002年に「薬剤師需給の予測について」の報告書をとりまとめた。その報告書中では「平成19年度以降に各年の新規参入薬剤師が段階的に減少し、最終的に20%程度減少することが、薬剤師免許を取得したにもかかわらずその専門性を活用できないという状況を防ぎ、薬剤師の適正数を保ちつつ薬剤師全体の資質向上を図り、患者により質の高い安心・安全な医療を提供するために、重要であると結論を得た」としていた。また、その後の「粗い試算」によれば、2027年には薬剤師は40万人となるが、需要は29万人として11万人の余剰が出ると予測されている。 一方、実際の薬剤師養成の定員の流れは総合規制改革会議の2001年(第一次答申)、2002年(第二次答申)を受け、2003年に大学学部・学科の設置基準が緩和され就実大学と九州保健福祉大学が約20年ぶりに薬学部を開設、その後も学生数を確保するため薬学部を新設する大学が相次ぎ、2007年までに新たに26大学・学部が新設された結果、入学定員は12,010人となり、5年間で5,000人以上と短期間で急増加した 。厚生労働省では「薬剤師需給の将来動向に関する検討会」を組織しているが、こうした現状に関係者から懸念が表明されている。同様に文部科学省においても2011年6月に行われた検討会の報告書「薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第7回)での主な意見(入学に関する事項)」においても委員のほとんどが規制緩和によって増えた定員数に危機感を持っていると報告している。2015年2月の同検討会(第17回)においても入学者の質の低下への言及が多くされており文部科学省が改善計画を立てさせ指導した大学の中には「実際の入学定員173名のうち薬剤師国家試験の合格者数が11名」を問題視した委員がいた。2014年の薬剤師国家試験では合格率は前年より18.26ポイント下がり60.84 %であったものの、2016年には76.85%と2013年以前の平均的な合格率に復し受験者数が過去最大であったため合格者数は過去最大の11,488名まで増加した。薬学部の新設はその後も続いており2018年度開学の山陽小野田市立山口東京理科大学を合わせ国公立18校、私立56校57学部の全国計74校75学部にまで増加しているが、さらに近年中の設置予定も既に公私立数校で具体化している。しかし、2016年度の在地方の新設私立薬学部入試状況を見れば受験者数、合格者数は定員数を上回っていても実際の入学者数が定員数の半数近い大学も数校(65%以下が5学部、85%以下が10学部(各6年制のみ))出ており、大学が薬学部の開設や薬科大学の開学を断念した例(郡山市、筑西市、上田市)も見られる。
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