二回目の提案
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4月11日夜の国際連盟委員会最終会合において、牧野は連盟規約前文に「各国民の平等及其の所属各人に対する公正待遇の主義を是認し」との文言を盛り込むという修正案を提案した。イギリスのセシル元封鎖相は「このような文句の挿入は全く無意味であり、意味があるとするなら、重大な反対をしなければならない。(中略)この問題は国際連盟成立後の活動に待つべきである。日本は現時点において五大国のひとつである事実をみれば、待遇の優劣は国際連盟においては問題にならない」と反対した。日本は「修正案はあくまで理念をうたうものであって、その国の内政における法律的規制を求めるものではないにも関わらず、これを拒否しようというのは、イギリスが他の国を平等と見ていない証拠である」とし、修正案の採決を求めた。その後イタリア、フランス、ギリシャ、中華民国、ポーランド等の各代表が賛否を述べ、討議が行われた。 議長であったウィルソンは「この問題は平静に取り扱うべきであり、総会で論議することは避けられない」と述べ、提案そのものを取り下げるよう勧告したが、牧野は採決を要求した。議長ウィルソンを除く出席者16名が投票を行い、フランス代表・イタリア代表各2名、ギリシャ・中華民国・ポルトガル・チェコスロバキア・セルブ・クロアート・スロヴェーヌ王国(後のユーゴスラビア王国)の各1名、計11名の委員が賛成、イギリス・アメリカ・ポーランド・ブラジル・ルーマニアの計5名の委員が反対した。 しかしウィルソンは「全会一致でないため提案は不成立である」と宣言した。牧野は「会議の問題においては多数決で決定されたことがあった」と反発したが、ウィルソンは「本件のような重大な問題についてはこれまでも全会一致、少なくとも反対者ゼロの状態で採決されてきた」と回答し、牧野もこれに同意した。牧野は「日本はその主張の正常なるを信ずるが故に、機会あるが毎に本問題を提議せざるを得ない。また今晩の自分の陳述および賛否の数は議事録に記載してもらいたい」と述べ、ウィルソンも応諾した。またフランス代表フェルディナン・ラルノード(ラテン語版)もこの採決方式を批判している。 4月28日の連盟国総会議において牧野は人種問題の「留保」について演説を行い、人種問題に関する日本政府の立場を説明した。成立は困難であると見られたため、総会での提案は行われなかった。これにより、日本は人種差別撤廃に関する提案を一時断念することとなった。
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