上げるタイミング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 23:36 UTC 版)
「日本の消費税議論」の記事における「上げるタイミング」の解説
安達誠司は「デフレ、及びそれに近い金融危機による信用収縮という大きな経済ショックから十分に立ち直る前に消費増税を断行した事例はほとんどない」と指摘している。 経済学者のポール・クルーグマンは、不景気である只中に増税を行えばデフレ・スパイラルを加速させると述べ、消費増税は財政拡張(雇用増を目的とした歳出の拡大)を行った後ですべきであると主張している。クルーグマンは、1998年の景気の落ち込みのきっかけは前年の消費増税にあったとみているが、経済が良い状態になったときに消費増税することには賛成している。また「2014年に8%、2015年に10%の消費税引き上げはタイミングが悪すぎる。いずれ上げなければいけないが、この時期に消費税を上げたら、消費が落ち込み、経済が悪化することは目に見えている。他国でショックが起きたときにはかなりきつく影響が波及する」と指摘している。 飯田泰之は「現在(2011年)の景況で消費税の即時増税をすることには大きな危険性が伴う」と指摘している。 浜田宏一は「橋本政権の消費税増税は税収アップの助けにならなかった」「せっかく上がりかけた景気が(消費)増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない」「(景気が)心配なときは(税率を)1%ずつ、なだらかに上げていく」と指摘し「法人税を下げて消費税を上げていく方向にしないといけない」と、中長期的な消費税増税を主張している。 経済学者の岩田規久男は「まず(成長によって)税収を上げ、それでも財政が再建できないところを見極めてから消費税増税で遅くない」「デフレのまま消費税を上げても税収は増えない。そんな増税に意味がないことは、火を見るよりも明らかである」と述べている。 高橋洋一は、最も簡単な増税策とは「すごいインフレにして、経済が過熱してしまうので、『冷や水かけろ』ということで増税する」ことであると述べている。 片岡剛士は「消費税率引き上げというと、財政赤字抑制といった観点から消費税率引き上げの是非が報道されるが、消費税率引き上げの際のタイミングを失すると財政赤字がむしろ拡大する可能性もある。経済・財政・社会保障の一体的な改革を進めるために必要なのは、早急な増税策の実行といった手段の議論ではなく、デフレから早期脱却し、政府が掲げる成長シナリオを消費税増税下でも確保できる経済状況を達成することである。安易な増税議論ではなく、景気動向とのタイミングを考慮し経済成長との両立を図りつつ、現制度の問題点を改善するための税制や社会保障の検討こそが求められている」「消費税増税を強行したことが結局日本経済を冷やしデフレ脱却を遠のかせてしまうとすれば、恐らく今後消費税増税を行うことは絶望的となるだろう。むしろデフレからの完全脱却を優先して、名目経済成長率4%、実質経済成長率2%といった状況が確認できるまで消費税増税には踏み込まない方が賢明である」と指摘している。 経済学者の伊藤隆敏は「財政再建は喫緊の課題だ。もはや日本の財政は危険水域に入っている。44兆円の財政赤字を、消費税に置き換えれば15-20%分である。現在(2010年)の5%の消費税率を20-25%に引き上げてようやく返せる莫大な額を、毎年将来世代から借りているわけである。借金は消費増税を遅らせれば遅らせるほど、雪だるま式にふくれ上がっていく。地道に増税で返済していくほかない」と指摘している。 井堀利宏は「毎年1%ずつ税率を上げていくのがよい。一度に上げようとすると『景気が回復していなければ駄目だ』などの政治的な抵抗で先延ばしになったり、不十分な税率のまま終わり、結果として機能しない恐れもある。景気動向と無関係に毎年上げることが大切である」と述べている。 岩田一政は、毎年1%ずつ税率を引き上げ税率15%にすべきであると提案している。 明治大学公共政策大学院教授の田中秀明は「消費増税は、その影響の程度はともかく、経済にデフレ効果をもつ。経済に悪影響を与えるのに反対であれば、永遠に増税や財政再建などできない」と述べている。
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