一意化定理、幾何化予想との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 07:35 UTC 版)
「リッチフロー」の記事における「一意化定理、幾何化予想との関係」の解説
リチャード・ハミルトン (Richard Hamilton) が1981年にリッチフローを導入した目的は、滑らかな 3次元多様体の位相分類に関連したウィリアム・サーストンの幾何化予想への見方を与えるためであった。ハミルトンのアイデアは、計量の中で滑らかでない特異な性質を持つ傾向にある非線形拡散方程式の一種を定義することにあった。したがって、与えられた多様体 M 上の任意の計量 g を置き換え、リッチフローによって計量を発展させることは、計量がある特別な良い性質を持つ計量に近づかねばならない。この計量は M の標準的な形(英語版) (canonical form) を構成するかも知れない。適当な標準的な形は既にサーストンにより特定されていて、サーストンの幾何学的モデル (Thurston model geometries) と呼ばれている。モデルには、3次元球面 S3、3次元ユークリッド空間 E3、3次元双曲空間 H3 という等質的で等長な 3つのモデルと、5つの等質的ではあるが等長性を持たない異種リーマン多様体がある。(これは 3-次元実リー代数の 9つのクラスへの分類であるビアンキ分類と密接に関連しているが同一ではない。)ハミルトンのアイデアは、これらの特別な計量がリッチフローの不動点のような振る舞いをするはずであるということにあり、多様体与がえられると、大域的には唯一のサーストンの幾何学が許容され、フローの下ではアトラクターとして振る舞うはずであるというアイデアである。 ハミルトンの正のリッチフローを持つ計量がある滑らかな3次元閉多様体は、サーストンの幾何学をただ一つ持つ。つまり球形の計量を持ち、リッチフローの特異点を引き付けるのように実際作用して、体積を保存するよう正規化される。(正規化されていないリッチフローの下では、多様体は有限時間内に一点に崩壊する。)このことは幾何化予想全体を証明したことにはならない。なぜならば、最も難しい場合は多様体が負のリッチ曲率を持つ多様体、特に負の断面曲率を持つ場合であるからである。(3次元閉多様体はすべて負のリッチ曲率を持つことができるという事実は、奇妙で興味深い!これは1986年に L. Zhiyong Gao と Shing-Tung Yau により証明された。)実際、19世紀の幾何学で成功したこととして一意化定理の証明があった。これはハミルトンのリッチフローが負の曲率を持つ2次元多様体から双曲平面と局所同値である 2-次元の多数の穴の開いたトーラスへ発展するという滑らかな 2次元多様体の分類に似ている。この話題は、解析学や数論、力学系、数理物理学、天文学さえも密接に関連する重要な話である。 規格化(一意化)という言葉は、正確には幾何学における特異な性質を滑らかにして取り除く方法を示唆しており、幾何化という言葉は滑らかな多様体上の幾何学を示唆していることに注意する。幾何学はフェリックス・クラインのエルランゲンプログラムに似た方法を使う。(詳細は、幾何化予想を参照)特に幾何化の結果は等長的ではない幾何学かも知れない。定数曲率の場合を含むほとんどの場合に幾何学は一意的である。この分野の重要な問題は、実数での定式と複素数での定式の間の相互関係である。特に2次元多様体というよりも複素曲線を規格化における多くの議論は説明する。 リッチフローは体積を保存はしないので、リッチフローを規格化や幾何化へ適用する際に注意すべき事項は、体積を保存するようなフローを得るようにリッチフローを正規化する必要があることである。このことに失敗すると、問題は(たとえば)与えられた 3次元多様体がサーストンの標準的な形の一つへ変化する代わりに、サイズが縮小してしまうだろう。 n次元リーマン多様体のモジュライ空間の一種を構成することは可能で、リッチフローは実際このモジュライ空間の中へ幾何学的フロー(英語版) (geometric flow) をもたらす(直感的に言うとフローに沿って粒子が流れる)。
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