三次元球面とは? わかりやすく解説

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三次元球面

(3次元球面 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 11:31 UTC 版)

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立体射影した超球面上の緯線 (赤), 経線 (青), 陪経線 (緑). 立体射影は等角写像であるから, これら直線は四次元空間において直交する (交点 (黄)).
三次元球面を三次元空間に直交射影したもの。表面を格子で覆うことで、断面として、三次元空間内の二次元球面の構造が見えているはずである。

数学における三次元球面(さんじげんきゅうめん、: 3-sphere; 3-球面)、三次元超球面(さんじげんちょうきゅうめん)あるいはグローム (: glome[1]) [注釈 1]は、通常の球面の高次元版である超球面の特別の場合である。四次元ユークリッド空間内の三次元球面は、固定された一点を「中心」として等距離にある点全体の成す点集合として定義することができる。通常の球面(つまり、二次元球面)が三次元の立体である球体境界を成すのと同様、三次元球面は四次元の立体である四次元球体の境界となる三次元の幾何学的対象である。三次元球面は、三次元多様体の一つの例を与える。

定義

四次元の直交座標系を用いるならば、中心 (C0, C1, C2, C3) および半径 r を持つ三次元球面とは、四次元実座標空間 4 において

ホップファイブレーションは S3R3 への立体射影を用いて視覚化することができて、それにより R3 は球状に押し固められる。画像は S2 上の点とそれに対応するファイバーが同じ色で示してある。

半径 r1 のとき、別の超球面座標系 (η, ξ1, ξ2) が、S3C2 への埋め込みを用いて以下のように与えられる。複素座標 (z1, z2) ∈ C2 をいま

模式図は極方向 (ξ1-方向) が赤矢印、周方向 (ξ2-方向) が青矢印でそれぞれ示されている。ただし平坦トーラスの場合には、どちらが極方向 (poloidal) でどちらが周方向 (toroidal) かは任意である。

η0 π/2 の間の任意の値で止めて考えるとき、座標 (ξ1, ξ2) は二次元トーラスをパラメタ付ける。ξ1 および ξ2 の各々を一定とすることで描かれる円形の軌跡は、トーラス上の直交格子を描く(図を参照)。退化する場合(η0 または π/2 のとき)これらの座標は円周を描く。

この座標系のもとで三次元球面上の球面距離は

で、また体積要素は
で、それぞれ与えられる。

ホップファイブレーション英語版での間を埋める円周たち (interlocking circles) を得るには、上記の方程式を単純に

と置きかえればよい[3]

この場合 η, ξ1 がどの円かを特定し、ξ2 が各円に沿った位置を特定する。ξ1 または ξ2 の何れかについてぐるりと一周 (0 から 2π まで) すれば、トーラスの両の軸となる全円が描かれる。

立体座標系

もう一つ便利な座標系が、S3 の極点からそれに対応する赤道超平面となる R3 への立体射影から得られる。例えば、点 (−1, 0, 0, 0) からの射影により、S3 上の各点 p

なる形に書くことができる。ただし、u = (u1, u2, u3)R3 のベクトルで ‖ u ‖2 = u 2
1
 
+ u 2
2
 
+ u 2
3
 
である。上記の二つ目の等号は、p を単位四元数と同一視し、また u を純虚四元数 u1i + u2j + u3k と同一視してのものである(四元数の乗法は一般に非可換だが、上記の式における分母分子は可換であることに注意)。この射影の逆写像は S3 上の点 p = (x0, x1, x2, x3)
へ写す。

(1, 0, 0, 0) からの射影も同様に考えることができて、この場合は点 pR3 の別のベクトル v = (v1, v2, v3) を用いて

の形に与えられる。逆写像は p
に写す。

u-座標は (−1, 0, 0, 0) を各点で定義され、v-座標は (1, 0, 0, 0) を除く各点で定義されることに注意せよ。これらにより S3 上の二つの座標チャート(この二つを合わせると S3 の全域がカバーできる)からなるアトラスが定まる。これら二つのチャートが重なる部分における局所座標の間の座標変換は

およびこの式の uv の役割を入れ替えたもので与えられることに注意。

群構造

単位四元数全体の成す集合と見なすとき、S3 は重要な構造として、四元数の乗法構造を持つことにる。単位四元数の全体は乗法のもとで閉じている積閉集合である)から、S3 自身にの構造が入ることになる。さらに言えば、四元数の乗法は連続、さらに滑らかであるから、S3位相群、さらに実リー群となる: S3 は三次元の非可換英語版コンパクトリー群である。リー群としての S3 はしばしば 斜交群 Sp(1) やユニタリ群 U(1, H) などと書かれる。

このようにリー群の構造を入れることのできる超球面は、単位円 S1—単位複素数全体の成す集合と見て—および S3—単位四元数の全体として—のみであることがわかる。同様の議論により、たとえば S7 を単位八元数全体の成す集合と見てリー群とすることができそうにも思われるが、これは八元数の乗法が結合性を持たないために正しい主張とはならない。八元数構造から S7 に入る重要な性質としては平行化可能性英語版があり、平行化可能な超球面は S1, S3, S7 に限られる。

四元数の行列表現を用いれば、S3 も行列表現することができるが、そのような表現の一つにパウリ行列を用いた表現

がある。この写像は、四元数体 から 2 × 2 行列環 M(2; ) への単射な多元環準同型を与える。この行列表現では四元数 q絶対値 ‖ q ‖q の表現行列の行列式平方根に等しいという性質がある。したがってこの行列表現から、単位四元数全体の成す集合は行列式 1 の表現行列全体として得ることができるが、それはちょうど特殊ユニタリ群 SU(2) であるから、リー群としての S3SU(2) に同型となることがわかる。ホップ座標系 (η, ξ1, ξ2) を用いるならば、SU(2) の任意の元を
の形に書くことができる。同じ結果は、SU(2) の各元の行列表現をパウリ行列の線型結合として表す方法でも得られる。任意の元 U ∈ SU(2) の形に書けることがわかるが、U の行列式が +1 という条件は、この式の係数列 (αi) が三次元球面上にあるという制約を含意する。

関連項目

注釈

  1. ^ しばしば、周辺構造として埋め込まれる空間の次元が n であること(あるいはそれが囲む領域としての超球体が n-次元であること)を以って「n-次元-」と番号付けする文献があるので注意。この流儀ではたとえば「グローム」は「四次元超球」となる。

出典

  1. ^ Weisstein, Eric W. "Glome". MathWorld (英語).
  2. ^ Georges Lemaître (1948) "Quaternions et espace elliptique", Acta Pontifical Academy of Sciences 12:57–78
  3. ^ The Flat Torus in the Three-Sphere”. 2018年11月12日閲覧。

参考文献

  • David W. Henderson, Experiencing Geometry: In Euclidean, Spherical, and Hyperbolic Spaces, second edition, 2001, [1] (Chapter 20: 3-spheres and hyperbolic 3-spaces.)
  • Jeffrey R. Weeks, The Shape of Space: How to Visualize Surfaces and Three-dimensional Manifolds, 1985, ([2]) (Chapter 14: The Hypersphere) (Says: A Warning on terminology: Our two-sphere is defined in three-dimensional space, where it is the boundary of a three-dimensional ball. This terminology is standard among mathematicians, but not among physicists. So don't be surprised if you find people calling the two-sphere a three-sphere.)

外部リンク




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