ワーズワスの主な作品
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「ウィリアム・ワーズワース」の記事における「ワーズワスの主な作品」の解説
ワーズワスの主な作品は『抒情民謡集』(17981、18002~18054)と1807年の『二巻詩集』、および『序曲』(1805~1850)に集約されるといっていいが、これ以外にもワーズワスはその長い人生に多くの詩と散文の作品を創作しており、その総量は当時の一般的詩人の1.5倍から2倍くらいはあるといわれている。彼の生前には抒情詩の他、『逍遥』が最もよく読まれたようだが、彼の評価が高まったのは生前は中小の抒情詩、没後はそれに加え『序曲』ゆえだと言っていいだろう。 ワーズワスを初めて学ぶ人に紹介すべきは「虹」と「ラッパ水仙」だろう。 My heart leaps up when I behold 私の心は踊る A rainbow in the sky: 空に虹を見るとき。 So was it when my life began; 私の人生の始めにもそうであった。 So is it now I am a man; 大人になった今でもそうだ。 So be it when I shall grow old, 私が年老いたときもそうであろう。 Or let me die! さもなくばわれをして死なしめよ! The Child is father of the Man; あの子供はこの大人の源なのだ。 And I could wish my days to be それゆえ、私は自らの日々が、自然の畏敬により Bound each to each by natural piety. それぞれ結び付けられることを願い得たのだ。 最後の3行はあえて一般の訳とは異なるものを提示している。 「ラッパ水仙」("The Daffodils") わが国でも1970年代頃までは高校英語のリーダーの教科書に掲載されていたこともあり、年配者なら記憶にあるだろう。 I wandered lonely as a cloud 私はさまよった、谷や丘の上を I wandered lonely as a cloud 私はさまよった、谷や丘の上を That floats on high o'er vales and hills, 高く漂う雲のように寂しく。 When all at once I saw a crowd, その時まったく突然私は見た、一団の A host, of golden daffodils; 黄金色のラッパスイセンの群生を。 Beside the lake, beneath the trees, 湖のそば、木々の下に、 Fluttering and dancing in the breeze. そよ風の中で揺れ、踊っているのを。 Continuous as the stars that shine 途切れなく咲く様子は、天の川で And twinkle on the milky way, 輝き、またたく星星の如し、 They stretched in never-ending line それらは決して終わらないラインを成し Along the margin of a bay: 湖の湾の縁に沿って伸びていた。 Ten thousand saw I at a glance, 私は一目で一万本も見た、花々が、 Tossing their heads in sprightly dance. 頭を軽やかな踊りで揺らせているのを。 The waves beside them danced; but they 花々のそばの湖の波も踊っていた、しかし Out-did the sparkling waves in glee: 花々の喜ばしさは煌めく波以上だった A poet could not but be gay, 詩人は陽気にならざるを得ない、 In such a jocund company: このような快活な一団の中では。 I gazed--and gazed--but little thought 私は見詰めに見詰めた--しかし思いもしなかった What wealth the show to me had brought: この景色が私にどんな豊かさを齎したかを。 For oft, when on my couch I lie なぜなら、虚ろな、あるいは憂鬱な気分で In vacant or in pensive mood, 私が寝椅子に横たう時に、しばしば They flash upon that inward eye 花々は私の内なる目に輝くから、 Which is the bliss of solitude; それは孤寡の時の祝福なのだ。 And then my heart with pleasure fills, そんな時私の心は喜びに満たされ And dances with the daffodils. あのラッパスイセンとともに踊るのだ。 郭公の詩人 以下は数あるワーズワスの名詩の中でも鳥を歌った「郭公に」を取り上げる。 英国ロマン派の詩には、鳥を主題とした作品が多く佳作が多い。例えば、パーシー・シェリーは「雲雀」(Skylark)の声に魅惑され、ひばりを主題とした詩を書いている。またジョン・キーツは、「夜鶯」(Nightingale) の神秘的な声に魅惑され、夜の闇に響くその歌声を主題に詩を書いている。 ワーズワスにとって、「郭公」(Cuckoo) は詩の霊感をもたらし、彼に生きることの喜びを教えてくれる鳥でもあった。ワーズワスは、「郭公に」として、次のような詩をうたった(全8スタンザのなか、前半4スタンザ)。 TO THE CUCKOO O BLITHE New-comer! I have heard,I hear thee and rejoice.O Cuckoo! shall I call thee Bird,Or but a wandering Voice? While I am lying on the grassThy twofold shout I hear,From hill to hill it seems to pass,At once far off, and near.Though babbling only to the Vale,Of sunshine and of flowers,Thou bringest unto me a taleOf visionary hours.Thrice welcome, darling of the Spring! Even yet thou art to meNo bird, but an invisible thing,A voice, a mystery; おお、陽気な訪問者よ! 確かに汝だ汝の歌を聞き、わたしは喜びにみたされるおお、郭公よ! 汝が鳥であろうはずはない 彷徨える聖なる声ではないのか?みどりなす草のうえに横たわって二重のさけび声をわたしは聞く丘から丘へとその歌は通り過ぎるひとたびは遠く、ひとたびは近くただ谷間へとあどけなくも呼びかけるが太陽の光にみち、花々のかおりにみち汝はわたしに、かの秘密の物語をかたる地上を離れた想像の時をもたらすみたび歓迎の言葉を、春の寵児よ!わたしにとって、汝はまさに鳥ではなく、不可視の存在であるその霊妙な声は神秘の精髄である
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