ロシア皇帝の宝石商へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 21:40 UTC 版)
「ピーター・カール・ファベルジェ」の記事における「ロシア皇帝の宝石商へ」の解説
ファベルジェはロシアのサンクトペテルブルクで、宝石商グスタフ・ファベルジェ(Gustav Fabergé)とデンマーク人の妻シャルロッテ・ユングステット(Charlotte Jungstedt)の間に生まれた。グスタフ・ファベルジェの父の一族はユグノーで、フランス・ピカルディのラ・ブテイユ(英語版)出身であり、ナントの勅令が破棄された際にフランスから脱出してきた。はじめはドイツのベルリン近辺に、次いでリヴォニアのバルト行政区に、さらにロシア地域に移住した。 グスタフ・ファベルジェは、まず最初にサンクトペテルブルクで修練し、1860年には商売を信用できる有能なマネージャーに任せて、妻や子どもたちとともにドレスデンに退いた。2年後には、第2子のアガトン(Agathon)が生まれている。 ファベルジェはおそらく、ドレスデンのアーツ&クラフト・スクールで学んだものと思われる。1864年、ファベルジェはヨーロッパへグランド・ツアーに出る。彼はドイツ、フランス、イギリスで、偉大な金細工職人の元で修行し、パリではシュロス商業カレッジのコースを取り、ヨーロッパの主要な博物館のギャラリー巡りをした。 1872年まで修行の旅を続け、26歳でサンクトペテルブルクに戻ると、アウグスタ・ユリア・ヤーコプス(Augusta Julia Jacobs)と結婚する。その後10年間、父代からの職人頭ヒスキアス・ペンディン(Hiskias Pendin)が彼の師であり監督であった。会社も1870年代には、エルミタージュの目録作成、修理、復元に関わっている。1881年に大通り沿いの 16/18 Bolshaya Morskaya に移転している。 ヒスキアスが1882年に亡くなると、カール・ファベルジェは会社運営の全てを引き受ける。 カールはマスター・ゴールドスミスの称号を得、これにより会社のホールマークに加えて自身のホールマークを使用できるようになる。カール・ファベルジェの評価は非常に高く、通常3日間行われる試験が省略されるほどだった。彼の弟アガトンは創造力豊かな優秀なデザインで、ドレスデンから会社に加わっている。アガトンもおそらくアーツ&クラフト・スクールで学んだものと思われる。カールとアガトンは、1882年にモスクワで行われた全ロシア博覧会で大評判となり、カールは金賞と聖スタニスラス賞とを受賞する。 ファベルジェの作品の1つは、エルミタージュ所蔵の宝物、紀元前4世紀のスキタイの金の腕輪のレプリカであった。ロシア皇帝アレクサンドル3世はオリジナルとファベルジェの作品とを見分けることができないと断言し、現代ロシアのすばらしい職人芸の例として、エルミタージュにファベルジェ工房の作品を展示するよう命じた。ファベルジェ工房の宝石の販売対象は、ロシア宮中に絞られる。 カールが工房を引き継いだ時点で、宝石は18世紀フランスのファッショナブルなスタイルで製作されており、アート・ジュエラーへの移行期であった。これは最終的に、失われていたエナメル細工の技術や、全ての石がそれぞれ最も引き立つよう1つのピースにセッティングする技術を復活させる結果となった。実際、最終デザインを決定するまでに、アガトンは10個以上のワックス・モデルを作製して、全ての可能性を試してみることは珍しくなかった。 アガトンが会社に加わった直後、工房は「オブジェ・デラックス」を発表した。これは、エナメルと宝石で装飾された金製品のシリーズで、電気の押しボタンからシガレットケースまでに渡っていた。この中には「オブジェ・ド・ファンタジー」も含まれている。 1885年、アレクサンドル3世はファベルジェ工房をロシア皇室特別御用達に指名する。また、工房に妻マリアへのプレゼントとしてイースター・エッグの作製を依頼し、翌年もイースター・エッグ作製を依頼する。 1887年からは、インペリアル・イースター・エッグはより精巧に作られており、カール・ファベルジェは明らかにデザインを任されて自由に作製している。ファベルジェ工房の伝統に従い、アレクサンドル3世本人でさえイースター・エッグのデザインは知らされなかった。唯一の条件は、それぞれの卵には思いがけない仕掛けを作りこまなくてはいけないというものだった。次の皇帝ニコライ2世は、母マリアと妻アレクサンドラのために、毎年2つの卵を注文していた。この習慣は、十月革命まで続いた。
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