モノクローナル抗体の臨床適用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 08:15 UTC 版)
「モノクローナル抗体」の記事における「モノクローナル抗体の臨床適用」の解説
詳細は「モノクローナル抗体治療(英語版)」を参照 1970年代に発明されたモノクローナル抗体は臨床に革命的な変化を起こすといわれたが、その後ほぼ20年間、臨床試験は上手くいかなかった。これは主に、マウスの抗体はヒトに抗原認識されることが原因であった。しかし1990年代になって、CHO細胞内に、マウスでなくヒトの免疫グロブリン遺伝子を発現するプラスミドを直接形質転換する方法が開発されて以降、この問題は克服された。この方法はさらに進化し、現在ではハイブリドーマを使用せず、ファージディスプレイにより1兆個の分子からなる莫大なクローンライブラリーから最適抗体がスクリーニングされ、その遺伝子をCHO細胞で大量生産する方法が用いられている。もしくは、ヒトの抗体を生産するトランスジェニックマウスを使い、直接ヒト抗体を得る方法が用いられる。これらの方法は、前臨床段階までの開発費がわずか約2億円で済むといわれており、従来の古典的化学薬品にかかる20億円と比較して非常に効率がよい。ただし細胞培養を必要とするため、最終製品の製造費用は化学合成による化学薬品と比べると、非常に高い。 モノクローナル抗体はタンパク質薬品であり、いわゆる化学薬品と違い経口投与ができない(普通週一回の注射)、製造費用が非常に高い、細胞内部に侵入できないなどの欠点を持つ。しかしいったん標的分子に結合すると、患者自身の免疫機構が働いて標的分子を含むがん細胞を高率で破壊できるなどの利点をもつ。また、免疫グロブリン自体はヒトの体内に存在する分子なので、それ自身による副作用は予想しやすい。 原理的にはポリクローナル抗体も臨床に使用可能であるが、人間の患者への薬品として使用するためには、薬品内の分子が化学的に厳密に定義され、さらにそれらを極めて高純度でかつ安定的に大量生産する必要があり、現実にはほぼ不可能であるといわれている。 ヒト血漿由来(血液製剤)の免疫グロブリン製剤は一種のポリクローナル抗体であり、様々な難病に対して使用され有効性を示している。しかし、これら血液由来の免疫グロブリン製剤が組換え抗体医薬品に容易に置き換えることができないのは、上記の品質管理の困難さからである。
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