プロセッサとメモリの速度差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 08:00 UTC 版)
「Random Access Memory」の記事における「プロセッサとメモリの速度差」の解説
マイクロプロセッサの速度(ここでは、周辺の速度によって待たされることが無かった場合の単位時間あたりのデータ処理量)とその向上に対して、メモリの速度(レイテンシとスループット)とその向上を比較すると、メモリの方が遅いという傾向は、マイクロプロセッサの誕生以来一貫して続いている。最大の問題は、チップとチップの間のデータ転送帯域幅に限界があることである。1986年から2000年まで、CPUの性能向上は年率平均で55%であったのに対して、メモリの性能向上は年率平均で10%ほどであった。この傾向から、メモリレイテンシがコンピュータ全体の性能においてボトルネックになるだろうと予想されていた。 その後、CPUの性能向上は鈍化した。これには、微細化により性能向上が物理的限界に近づいていることや発熱の問題もあるが、同時にメモリとの速度差を考慮した結果でもある。インテルは、その原因について次のように分析している。 第一に、チップが微細化しクロック周波数が上がると、個々のトランジスタのリーク電流が増大し、消費電力の増大と発熱量の増大を招く(中略)、第二にクロック高速化による利点はメモリレイテンシによって一部相殺される。つまり、メモリアクセス時間は、クロック周波数の向上に合わせて短縮することができなかった。第三に、これまでの逐次的アーキテクチャでは、ある種のアプリケーションは、プロセッサが高速化したほど性能が向上しなくなっている(フォン・ノイマン・ボトルネック)。さらに、集積回路の微細化が進行したことにより、インダクタンスの付与が難しく、信号伝送におけるRC遅延が大きくなる。これも周波数向上を阻害するボトルネックの一つである。 信号伝送におけるRC遅延については Clock Rate versus IPC: The End of the Road for Conventional Microarchitectures にもあり、2000年から2014年のCPUの性能向上は、最大でも年率平均で12.5%という見積もりが示されていた。インテルのデータを見ても、2000年から2004年の間、CPUの速度の向上は鈍化している。 しかし、この見積もりはCPUの性能向上があくまで「クロック周波数の向上によって」高性能化するという前提に立っていた。だが、2004年に AMDがK8アーキテクチャを発表すると、パイプラインバーストによる処理遅延を抑え単位クロック数あたりの命令実行数を向上することがトレンドとなり、クロック周波数のむやみな向上は止まったが、処理能力の向上はむしろ激化した。さらに、この頃から1つのプロセッサダイに複数の主演算コアを搭載し、さらにそれを仮想的に複数のコアとするスレッディング技術を搭載することが主流となった。AMDの製品では、2005年のAthlon64 X2 3800+ では約7.31GFLOPS相当だったが、2017年のRyzen 7 1800Xでは約42.53GFLOPSにも達しており、これは年率平均にすると約50%程度の性能向上と、2000年以前とさして変わっていない。
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