ハーグ仲裁裁判所判決後
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2016年7月12日、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が、太平島を含む南沙諸島(スプラトリー諸島)には法的に排他的経済水域(EEZ)を設けられる「島」はないと認定したと報道された。中華民国(台湾)が実効支配する太平島が「島」ではなく「岩」だとして排他的経済水域を認めない判断を下した(南シナ海判決)。さらには「中国の台湾当局」という表現が判決文にあることに対して、強く反発。蔡英文総統は「裁定は台湾の権利を傷つけるもの」として軍艦(康定級フリゲート「迪化」)を派遣した。 2016年9月20日、新たな構造物が4つ建設されたことが、グーグルアースで明らかとなった。これについて馮世寛国防部長は、「全ての軍事施設と用途は機密であり、説明しかねる。」「太平島には強固な防衛能力があることを知ってほしい。」と語った。 また、海岸巡防署は「対外説明はできない」とコメントを控えた。 2016年9月21日、中華民国政府はグーグル社に、太平島について、グーグル・アースの衛星画像をモザイク処理するよう求めた。中華民国国防部の陳中吉報道官は「軍事機密と安全を守るという前提条件のもと、重要な軍事施設の映像をぼかすようグーグルに要請した。」と述べ、海岸巡防署は「撮影場所が軍事エリアだとグーグルは認識していなかったかもしれない。」とみて、グーグルと協議中であることを認めた。これに対して、グーグル社は台湾の要請を検討していると述べた。これにより、中国政府だけでなく、台湾政府までもが南沙諸島の軍事基地化を進めていることが明らかとなった。 2016年12月9日、日本から南シナ海の各諸島を接収し、管轄権を回復してから70年目の節目に合わせ、台北市の国史館では70周年を記念する特別展が開かれた。蔡英文総統は開幕式の挨拶で、「政府は南シナ海の領有権を守り続け、主権と合法的な権利を放棄しない」と述べ、国際法と国連海洋法条約に基づき、同海域でのしかるべき権利を主張していくことを強調した。 2017年3月29日、中華民国海岸巡防署は太平島で3月29日から3日間にわたって定例の射撃訓練を実施した。それに対して、ベトナム当局が3月30日に「主権の侵害であり、海上の安全に脅威を与えた」と抗議し、同日に中華民国外交部はベトナム政府に対して「太平島は中華民国固有の領土であり、定期的な訓練を行う権利がある」と主張し、「『争議を棚上げし、共同開発を行う』という基本原則の下で、近隣諸国と共同で平和と安定を維持していきたい」との立場を示した。 2017年4月29日、台湾国防部は大学院生を対象に、太平島を軍艦で訪れる9日間の研修キャンプを開催した。若い研究者に南シナ海政策を理解・支持してもらい、同海域における台湾の主権をアピールするのがねらいであり、参加者は太平島に1泊して、淡水の井戸、農場、住民遺跡などを見学し、中華民国の国旗掲揚や手紙の投函などを体験した。また、航海中は南シナ海戦略や軍史に関する講義や実技訓練を受けた。2017年度は、7月までにあと3回実施する予定であり、第4陣には小中学校の教員が参加する予定である。
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