ニフティサーブ現代思想フォーラム事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 19:01 UTC 版)
「ニフティサーブ」の記事における「ニフティサーブ現代思想フォーラム事件」の解説
ネット上での書き込みが名誉毀損となるか、また、ネット管理者に書き込みを削除すべき管理責任があるかについて、日本で初めて問われた裁判として注目されたのが、いわゆるニフティ訴訟である(その後提起された他のニフティサーブに関連して起こされた裁判と区別するために「ニフティサーブ現代思想フォーラム事件」とも言われる)。1994年に提訴され、1997年5月27日に一審判決、2001年9月5日に二審判決が出された。発端は現代思想フォーラム(FSHISO:えふしそ)に設置された「フェミニズム会議室」であった。フォーラム名からすると高尚な話題を扱っているようであるが、実際には思想・信条・宗教を異にする者が激しい議論を繰り広げ、しばしば互いに罵倒しあうような光景もみられた。 事件の概要は以下の通りである。運営スタッフでもあった女性会員に対して、新規に加入した男性会員は、批判的な意見をもち、挑発的ともいえる文体での書き込みを繰り返していた。他方、女性会員は男性会員の勤務先などプライバシーを詮索したり、リアルタイム会議室(RT)でのチャットから男性を排除したりした。男性会員は挑発を繰り返し、女性会員が自ら寄稿していた離婚をめぐる私記の中で触れられた2度の中絶と流産の体験について、「胎児殺し」「嬰児殺し」と非難した。さらに男性会員の非難はエスカレートし、誹謗中傷の域に達した。ただ中絶の体験については、他の会員からも女性会員に対する批判的意見がなげかけられた。このような経緯の中で、女性会員はフォーラムでの書き込みをほとんどしなくなった。他方で、女性会員は、シスオペへのメールで、男性会員の発言を削除することを要求し、この際、自分の依頼があったことは伏せるよう条件を付した。シスオペは、「自己責任の原則の下で、フォーラム内での民主的な議論を進めるべきであるから、シスオペの独断、または対象者の依頼があったことを伏したままでの発言の削除は、基本的に行わない」という運営方針をとっていた。このため、当事者間での話合いとフォーラム内での公開での議論をするよう促した。しかし、これを不服として、女性が男性に対して名誉毀損による不法行為責任を、またシスオペ、ニフティ社に対して削除義務違反(監督義務違反)による債務不履行責任を追及するために、民事訴訟を起こしたものである。一審判決では、シスオペ、ニフティ社の監督責任を含め、被告3者に賠償を命じた。二審判決ではフォーラムの性格上シスオペの運営方針は妥当であったと判断され、シスオペ及びニフティ社の責任は否定された(ただし男性の名誉毀損は肯定、確定)。なお、男性会員は、女性会員に対して、RT会議室での排除(スクランブル)が、いわゆる「村八分」にあたり、不法行為(名誉毀損)にあたるとして反訴提起を行った。反訴に対して裁判所は、女性会員が行ったスクランブルについて、「反対意見に対する寛容の必要性についての基本的な理解に欠けることを窺わせる行動」(二審判決)と評価しながらも、1度のチャット中に一時的に排除したに過ぎないことを理由に、法的には、「村八分」と同視するほどの違法性が認められないとして、この反訴請求を棄却した。
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