チョバム・アーマー
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チョバム・アーマー(Chobham armour)は1960年代に開発された複合装甲の一種。
その名前は、イギリスの戦車研究所があるイングランドサリー州の町チョバム・コモンの地名に由来する。当初は俗称で、現在ではセラミック製の装甲を持つ車両の代名詞ともなっている。かつてはバーリントン、ドーチェスターといった他の呼称も存在した。
チョバム・アーマーの詳細は今でも公開されていない。ただし、セラミックタイルが金属製のマトリックスと呼ばれるケースに収められ、保持板と何層もの樹脂によって接着されているという構造は明らかになっている。セラミックの高い硬度により、高性能対戦車榴弾(HEAT)等の成形炸薬弾や運動エネルギー弾に対しては高い防御効果があるとされる。
チョバム・アーマーはイギリスのFV4211の開発に際して発明され、最初に実装されたのはアメリカのM1エイブラムスである。現在までにチョバム・アーマーを装備していることが公表されている戦車はM1エイブラムス、チャレンジャー1/2だけである。
防御性能
装甲に使われているセラミックの硬度が著しく高いため、成形炸薬弾頭や運動エネルギー弾(KE-penetrators)に対しては優れた防御効果を持つ。セラミックは(たとえ粉々になっても)貫通弾を阻止する高い能力を持っている。
構造
セラミックタイルは複数着弾に対する問題を抱えており[1]、連続的な衝撃に対しては防御力が急速に低下してしまう。防御力の低下を最小に抑えるためには、タイルは可能な限り小さいことが望ましいが、タイルを格納するマトリックスには実用性の観点から1インチ(25mm)程度の厚みは最低限必要である。また、タイルによってカバーされる領域も直径4インチ(10cm)以下となると実用的観点から不便である。マトリックスに格納された六角あるいは正方形のタイルは、加熱したマトリックスに等圧的に押し込むか[2]、またはエポキシ接着剤で固定されている。なお、タイルを等圧的にマトリックスの中に押し込めておく方法は、接着材を使う方法と比べ、運動エネルギー弾に対する防御効果が著しく高いことが90年代の初頭に判明している[3]。
マトリックスは保持板によって支持されるが、これにはセラミックタイルを裏側から支える機能だけでなく、衝撃によるマトリックスの変形を防ぐという機能もある[4] 。保持板の質量は、典型的には複合装甲の質量全体の半分程度を占める。
セラミックタイルでは傾斜装甲による優位性はない、むしろ一発の着弾で多くのタイルが割れる。そのため割れが伝播しないようにあらかじめ分割されている[5]。
素材
多くの複合材が長年開発されてきたが鉄と同重量で約5倍の耐性があるとされる。炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化シリコン、窒化ケイ素、窒化チタン、炭窒化チタン、炭化チタン、酸化アルミ(コランダムかアルミナ)、コーディエライト、酸窒化アルミ、アルミ-マグネシウム合金、酸化ベリリウム、ホウ化チタン、炭化タングステン、一窒化二タングステン、ホウ化ジルコニウム、ジルコニア、ジルコニア複合材料、合成ダイヤモンドなどが使用される [6]。
脚注
- ^ W.S. de Rosset and J.K. Wald, "Analysis of Multiple-Hit Criterion for Ceramic Armor", US Army Research Laboratory TR-2861, September 2002
- ^ Bruchey, W., Horwath, E., Templeton, D. and Bishnoi, K.,"System Design Methodology for the Development of High Efficiency Ceramic Armors", Proceedings of the 17th International Symposium on Ballistics, Volume 3, Midrand, South Africa, March 23-27, 1998, p.167-174
- ^ Hauver, G.E., Netherwood, P.H., Benck, R.F. and Kecskes, L.J., 1994, "Enhanced Ballistic Performance of Ceramics", 19th Army Science Conference, Orlando, FL, June 20-24, 1994, p. 1633-1640
- ^ V. Hohler, K. Weber, R. Tham, B. James, A. Barker and I. Pickup, "Comparative Analysis of Oblique Impact on Ceramic Composite Systems", International Journal of Impact Engineering 26 (2001) p. 342
- ^ D. Yaziv1, S. Chocron, C.E. Anderson, Jr. and D. J. Grosch, "Oblique Penetration in Ceramic Targets", 19th International Symposium of Ballistics, 7–11 May 2001, Interlaken, Switzerland TB27 p. 1264
- ^ S. Yadav and G. Ravichandran, "Penetration resistance of laminated ceramic/polymer structures", International Journal of Impact Engineering, 28 (2003) p. 557
参考資料
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- Hull, Andrew W; Markov, David R. and Zaloga, Steven J. (2000). Soviet/Russian Armor and Artillery Design Practices: 1945 to Present. Darlington Productions, Darlington
- Zaloga, Steve (1993). M1 Abrams Main Battle Tank 1982-1992. Osprey Publishing Ltd., London
- Clancy, Tom (1994). Armored Cav — a guided Tour of an Armored Cavalry Regiment. Berkley Books, New York
より詳しい文献
- Jeffrey J. Swab (Editor), Dongming Zhu (General Editor), Waltraud M. Kriven (General Editor); Advances in Ceramic Armor: A Collection of Papers Presented at the 29th International Conference on Advanced Ceramics and Composites, January 23-28, 2005, Cocoa Beach, Florida, Ceramic Engineering and Science Proceedings, Volume 26, Number 7; ISBN 1-57498-237-0
外部リンク
チョバムアーマー
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「チャレンジャー1」の記事における「チョバムアーマー」の解説
詳細は「チョバム・アーマー」を参照 砲塔前・側面装甲にチョバムアーマーと言われる装甲を採用している。チョバムアーマーとは、中空装甲内部にハニカム構造のセラミックス等を挟んでいる積層(複合)装甲の一種とされているが、詳細な材質については他の複合装甲同様に一応の軍機扱いであり、開発当事国であるイギリスから直接技術を購入しない限り開示されないのが建前である。積層装甲の特徴として通常の徹甲弾のみならず成型炸薬弾の運動エネルギー相殺にも効果を発揮する。 湾岸戦争時にT-55の100mm砲の直撃を砲塔正面に受けたことがあるが、表面塗装が燃えた程度の被害であった。 (ちなみに、NATO加盟国による合同軍事演習の時、各国の戦車兵たちは自国の戦車が最も良いと言いつつ、「実戦では何に乗りたいか?」と問われた際に、「チャレンジャーに乗りたい」と言った戦車兵が最も多かったという逸話が生まれたのも、この装甲から来ている面が大きい)。 しかし、幾つもの素材を重ねる特質上加工時の柔軟性には期待できず、それまでの戦車に多用されていた鋳造による曲面加工には向かない。従って外見的に平面で構成されていたため登場当時には、丸みを帯びたチーフテンとは対照的な新世代戦車であることを周囲に印象づけた。 また、車体全面にその装甲が施されているわけではないため、湾岸戦争時などは追加装甲で対応した。またチャレンジャー1では砲塔右側面から正面にかけての部分に暗視装置が配置されており、切り欠けが有る部分には施されていない。そのため、施されていない部分の防御効果については疑問視されていた。
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