チャハールシャンベ・スーリー
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チャハールシャンベ・スーリー | |
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テヘランにおけるチャハールシャンベ・スーリー、2018年3月
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別名 | チャールシャンベ・スーリー |
挙行者 | ![]() ![]() |
種類 | 国の祭り、民族的祭り、文化的祭り |
日付 | 春分の日の前の最後の火曜 |
関連祝日 | ノウルーズ, スィーズダハベダル |
チャハールシャンベ・スーリー(ペルシア語: چهارشنبهسوری; 直訳: 赤い水曜日)とは、ノウルーズ(イランの新年)の前の最後の水曜日の前夜(「水曜日」といっているが、1日が日没から始まるため、現代でいうと火曜日の夜となる)に祝われるイランの祭りである。
概要
「チャハールシャンベ」は水曜日、「スーリー」は祭り[1] もしくは赤を意味する。赤は火の色であることに由来する。
スーリーの祭りは太陽と死者の賞賛とも関係がある。古代、太陽は神の一つであり、太陽の賞賛は古代の祭りに深く根ざしている。スール Surは赤を意味し、太陽神スーリヤと同じ語根をもつ。ヘロドトスによれば、エルテヤン(イラン人)は太陽を崇拝していた。アケメネス朝の王の石碑によって火の重要性をみることができる。また、リグ・ヴェーダの最初のマントラは、火を称賛している。チャハールシャンベ・スーリーとホーリー祭は同じ起源を持っている [2]。
チャハールシャンベ・スーリーの風習
火を飛び越える
祭りが始まる前に、人々は屋外の開放された広い空間に小枝を集める。日没後、1つまたはそれ以上の焚き火を作り、炎を飛び越えながら「sorkhi-ye to az man, zardi-ye man az to(あなたの赤みを私のものにし、私の黄色をあなたのものに)」と唱える。これには浄化の意味があると考えられている。
歴史的背景
この祭りはゾロアスター教の古代イランの儀式に端を発している。古代イラン人は、死者の霊を祝い、今日では Farvardineganと呼ばれている、一年間の最後の5日間にHamaspathmaedaya ( Hamaspaθmaēdaya )の祭りを祝った。古代イラン人は死者の霊が再会のために来ると信じていた。 7人の聖なる不死者( Aməša Spənta )が称えられ、新年の夜明けにより儀式が正式に終了するとされた。この祭りはまた、火と人間の創造を祝う祭りでもあった。
写真ギャラリー
脚注
- ^ Kasheff, Manouchehr; Saʿīdī Sīrjānī, ʿAlī-Akbar (15 December 1990). "ČAHĀRŠANBA-SŪRĪ". In Yarshater, Ehsan (ed.). Encyclopædia Iranica. 6. IV. New York City: Bibliotheca Persica Press. pp. 630–634. 2016年3月15日閲覧。
- ^ Dr.Ajam (2015年3月16日). “Newrouz and Chaharshanbe Suri” (Per&en). Parssea. 2022年3月8日閲覧。
参考文献
関連項目
チャハールシャンベ・スーリー
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「ノウルーズ」の記事における「チャハールシャンベ・スーリー」の解説
チャハールシャンベ・スーリーでは、人々は年末最後の水曜日の日没に火を燃やし、特別な儀礼を催す。火は古代からイラン人にとって神聖であるとともに神の象徴と考えられてきた。神聖な火を用いて新年に移り変わる前に旧年の醜いものや穢れたものを燃やし、自分に関わる不幸を清算しなければならないと人々は信じている。火を燃やすことで不幸や不運・不浄を取り除き、新年の幸運や健康を願う、無病息災の儀礼である。元々はハマスパスマエーダヤというゾロアスター教の祝祭に由来していると考えられている。また、チャハールシャンベ・スーリーが水曜日に行われる理由として、その内容がチャールシャンベ・スーリーと良く似ているホラーサーンの人々が信じているモフタールの反乱を挙げることができる。ホラーサーンの人々に伝わるモフタールの反乱とは、ヒジュラ暦66年 (西暦685年)アラブ人軍司令官であるモフタールが監獄から解放された後、カルバラーの殉教者の復讐をするために起こした反乱である。この反乱を起こすにあたりモフタールは、自分の仲間であるシーア派と敵とを区別し敵だけを攻撃するために、自宅の屋根に火を灯すようにとシーア派信徒に命じた。この夜が年末最後の水曜日であったために、後にイラン人が火をつける儀礼つまりチャハールシャンベ・スーリーを年末最後の水曜日に行うことになったということである。 全国的に行われているチャハールシャンベ・スーリーの中心となる儀礼は、家の前かみんな集まる場所で火を焚いてその上を飛び越えることである。しばを束にし、間隔を開け、1・3・7束を路地の中央あるいは中庭に置き、それを火に点し、人々は「私たちの黄色はあなたのもの あなたの赤色は私たちのもの 悲しみは去り喜びがやって来い 不幸は去り幸運がやってこい」というまじないの言葉を唱えながら火の上を飛び越える。家族が一通り飛び終えると、火は燃え尽きるまで放置しておくか、あるいは水をかけて消される。それは燃えている火を息を吹きかけて消すことは不吉であると信じられているからである。火が灰になると、家族の一人がその灰をあつめ、水に流すか家の外(特に四辻)に散らす。これは、灰に込められた災難・不幸が水あるいは風にのって、家や家族から遠ざかると信じられているからである。 また屋根から壺を地面に投げつけて割ることで、災難・不幸を撃退する儀礼も行われる。災難・儀礼が詰められた壺を壊すことで、それらが撃退されると人々は信じている。ホラーサーン地方でも火を燃やした後同様に壺を割る儀礼が行われているが、そこではまず壺の中に灰と潮とダハシャヒーの貨幣を入れ、家族一人一人が頭上で一周壺を回し、最後の人が屋根に運び、そこから路地の中央に向けて投げる。壺を投げる時には「これで不幸や凶眼や貧困を自宅から遠ざけた」と言いながら投げる。人々は壺を遠くへ投げれば投げるほど、不幸や災難が家や家族から遠ざかると信じている。 上記のような一連の儀礼が終わると、家族が集まって乾燥果物(アジーレ・チャハールシャンベスーリー)やお菓子を食べる。この年末最後の水曜日の夜に、塩気のない乾燥果物を食べることは幸運をもたらすと信じられている。 この他にも男女が参加する一般的な儀礼の他に、女性によって催され女性にのみ参加を許された特別な儀礼がある。高橋は以下の5つの儀礼を挙げている。 ①首に錠をかけ四辻に座ることによる開運 ②娘を燃えさしで追いかけることによる開運 ③市場の四辻にあるキブラの方向を向いた薬草屋を騙し、薬草屋から「無駄なもの」を買うことによる開運 ④モスクのミナレットの下に座り、チャードルの端に錠を締めることによる開運 ⑤皮なめし工場の窪みでくるみを割り、ろうそくを点すことによる開運
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