チェルニー(ツェルニー)
18世紀末のフランス革命は西洋社会のあらゆる側面に根本的な変化をもたらした。一連の革命を通して権力を手にした一部の民衆によって王権神授説に基づく権力システムは破壊され、現実世界は市民による議会政治を通して変容し向上しうるものと考えられるようになった。同じころ、イギリスに端を発する産業革命の波はヨーロッパ中を席巻した。資本主義に目覚めた市民は次々に会社を興し、工場の機械化を推し進め自動的・効率的に製品を生産し流通させる仕組みを整えていった。産業社会の発達が幸福と豊かさに満ちた理想世界をもたらすと信じる人々にとって、勤労は神の救済に代わる信仰の対象となり、生活を律する美徳となった。 カール・チェルニーはまさに初期産業化社会が生み出した近代的勤労の権化である。66歳という決して長くはない生涯のうち、優に千を超す作品を書いたチェルニーの出版作品は通し番号にして861に上る。今日、彼はピアノ学習者に必須の練習曲作曲家としてしか知られていないが、練習曲や指の練習の教材は全作品のほんの数パーセントを占めるに過ぎない。
ヴィーンのピアニスト、ピアノ教師、作曲家。10歳でベートーヴェンに師事し、そのピアノ作品の演奏でピアニストとして高い名声を得た。ハンスリクをして「フンメル以降の最大のピアニスト」と言わしめたが、次第に舞台から身を引き、教師として、また著述家として活躍した。弟子に、タールベルク、リスト、またベートーヴェンの甥のカールなどがいる。
著述は主としてピアノ奏法や即興演奏のための手引き、作品解釈、作曲教程などで、譜例を豊富に交え、判りやすい文体で書かれている。また、J.S.バッハ、D.スカルラッティの作品を校訂し、さまざまな演奏指示記号を書き込んだ実用版を出版した。
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