作品解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 09:47 UTC 版)
「二十年後 (オー・ヘンリーの小説)」の記事における「作品解釈」の解説
作中では、堅実な人生を歩んだジミーに対しては無批判であるのに対して、犯罪に走ったボブに対しては鉄槌を下している。これはボブ個人を批判したというよりはボブのような人間全体、すなわち法を犯してまでアメリカン・ドリームを追い求めるような人間を批判したものと解釈できる。具体的には同時代を生きたダイアモンド・ジム・ブレイディ(英語版)を批判したとみることができる。ブレイディがボブのように法に触れたという証拠はないが、ニューヨークで生まれ、一代で財を成し、ダイヤモンドや美食を愛したことが共通しており、20年前にボブとジミーが食事したレストランの名が「ビッグ・ジョー・ブレイディズ」とブレイディの名を含んでいること、ジムの愛称形の1つ「ジミー」が登場人物の名に使われていることから、オー・ヘンリーがブレイディを意識して書いたことは疑う余地がない。当時の読者もブレイディとボブの類似性に気付きながら読んでいたと思われるが、この小説が執筆された当時ブレイディは存命中であったため、オー・ヘンリーはボブの逮捕という衝撃の瞬間で筆を置き、ボブないしブレイディに対する批判の一切を読者に委ねたのであった。こうした拝金主義の悪徳な人物と対極の人物として、地味ながら勇気や誠実などと表現すべきジミーを登場させ、両者をぶつけている。 意外な結末(サプライズ・エンディング)は、一歩間違えば馬鹿馬鹿しい読者騙しとして批判を浴びやすいものであり、用意周到かつ隙間なく伏線を張り、トリックを練り上げ、スリルとサスペンスを掻き立てて一気に意外な事実を突きつけ、その瞬間に作者の意図と作品全体の構成と意味を明示しなければ成立しない。要するに、その驚きが読者の感情に訴えかけてくるだけの「情緒的な深み」をも含まなければならない。こうした意味で金子光茂は、オー・ヘンリーは意外な結末を多用してきたが、短編として世界的名声を得た作品は『二十年後』のほかにないと述べている。
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