サスペンション・ブレーキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 05:47 UTC 版)
「スバル・1000」の記事における「サスペンション・ブレーキ」の解説
サスペンションにはスバル・360に引き続き4輪独立懸架で、フロントが縦置きトーションバー・スプリング(ねじり棒ばね)をアッパーアームに使用するダブルウイッシュボーン、リヤがトーションバー・スプリングとセンター・コイルスプリング併用のトレーリングアームで、フロントはトーションバー前端のカムによって、リヤはセンター・コイルスプリング部のボルトをレンチによって、それぞれ車高調整が可能となっていた。 スバル・1000の特徴である、トランスミッション側にブレーキを配置するインボード・ブレーキの採用は、主にFF方式採用によるフロントタイヤ切れ角の減少を補う為であったといわれている。特に開発途上では、最適な等速ジョイントの開発の目途がなかなか立たず、ジョイントの不等速性から発生する振動を軽減する狙いもあったといわれている。 またインボード・ブレーキの採用によって可能になった「センターピボット式ステアリング」は、フロントサスペンションのキングピンの軸線とホイールの中心線を一致させたもので、路面からの入力に対してサスペンション自体の強度に頼ることなくスムーズにストロークさせることが可能で、フロントダブルウイッシュボーンサスペンションの採用と相まって、不要なジオメトリー変化を押さえ、ばね下重量を軽量化できる点で、理論的には最も優れたサスペンション構成といえる。さらに4輪独立懸架の採用により、FF方式本来の優れた直進安定性と高い操縦安定性に、スバル・1000ならではの鋭い操縦性と安定したロードホールディングをもたらした。 こうしたエンジニアリングの理想を具現化したメカニズムは、航空機製造との共通性を感じさせるもので、一部からは非常に高い評価を得て、熱狂的な「スバリスト」と呼ばれる信奉者を生み出したが、一方、当時、富士重工業の販売・サービス網は脆弱で、一般の整備工場にメンテナンスを頼らざるを得なかった状況で、アフターサービスの現場からの寄せられるメンテナンスの煩わしさ(クラッチ板交換にエンジンの着脱作業を要する、インボードブレーキの整備性が悪い問題など)に対する声や、それまでのFF車がドライブシャフト・ジョイントの耐久性に問題を抱えていたために、その耐久性に懐疑的な声も少なくなく、そのことが当時のスバル・1000の評価に影響を与えていたことは否定できない。 このスバル・1000のインボード・ブレーキは、スバル・ff-1、スバル・ff-1 1300Gを経て、1971年の「レオーネ」の登場の際には一般的なアウトボード・ブレーキに改められ、この特徴的な「センターピボット式ステアリング」も廃止された。 この「センターピボット・ステアリング」は、1990年代にトヨタの「スーパーストラットサスペンション」の開発の端緒になったといわれている。
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