サオラとは? わかりやすく解説

サオラ

別名:ベトナムレイヨウ
英語:saola

ベトナムからラオスにかけての山岳地帯分布するウシ科動物1992年初め研究者によって発見され、その翌年新種記載された。「サオラ」はベトナムタイ族言語で「紡錘形」を意味し、この動物の角の形状表しているとされる学名属名)を「Pseudoryx(偽のオリックス)」という通り系統的にオリックス属近縁である。

サオラの主な特徴は、2本の長く尖った角を持つことや、顔面に白い斑紋があることなどである。成獣体長は80-90センチメートルほどで、ニホンカモシカ成獣とほぼ同じサイズだが、これほど大きなサイズ哺乳類が、近年新種として発見される例は稀とされる

サオラの目撃例捕獲例は僅少で、「幻の動物」と呼ばれることもある。過去数度現地住民などによってサオラが捕らえられた例があるが、いずれも間もなく死亡している。2013年9月に、ベトナム山岳地帯世界自然保護基金WWF)とベトナム森林保護当局設置するカメラに姿が捉えられ生きている姿が確認された。

サオラの正確な個体数分かっていないが、ごく僅かだと見られている。また、乱獲開発伴って減少傾向にあるとされることから、IUCN国際自然保護連合)が指定する絶滅危惧IA類」の一つ数えられている。

関連サイト
Pseudoryx nghetinhensis - The IUCN Red List of Threatened Species


サオラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/15 21:03 UTC 版)

サオラ
サオラ Pseudoryx nghetinhensis
保全状況評価[1][2]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目 Artiodactyla
鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目 : 反芻亜目 Ruminantia
下目 : Pecora
: ウシ科 Bovidae
亜科 : ウシ亜科 Bovinae
: サオラ属
Pseudoryx Dung, Giao, Chinh, Touc, Arctander & MacKinnon, 1993[3]
: サオラ P. nghetinhensis
学名
Pseudoryx nghetinhensis
Dung, Giao, Chinh, Touc, Arctander & MacKinnon, 1993[2][3]
和名
サオラ[4][5]
英名
Saola
Vu Quang ox
[5]

サオラPseudoryx nghetinhensis)は、偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)ウシ科サオラ属に分類される偶蹄類。本種のみでサオラ属を構成する[2][3]。別名ブークアンオックス[4]ベトナムレイヨウ[5]

分布

ベトナムラオス[2][4][5]

形態

体長150 - 200センチメートル[4][5]。尾長13センチメートル[4][5]。肩高80 - 90センチメートル[4][5]体重90キログラム[4]。全身の毛衣は濃赤褐色や暗褐色と変異がある[5]。四肢は黒い[5]。眼の周囲や鼻面、頬、蹄の上部、臀部下部に白い斑紋が入る[5]

雌雄共に断面が円形で、やや捻じれるが直線的な角がある[5]。角長32 - 52センチメートル[5]。名前は生息地の呼称に由来し、「細長い角」の意[4]。属名Pseudoryxは「偽のオリックス属」の意で、角がオリックス属を連想させることに由来する[4]。眼下部にある臭腺(眼下腺)は発達する[5]。眼下腺の開口部には動かす事ができる肉垂がある[5]。第2、5指趾の蹄(側蹄)が退化している[5]

オスは角の先端が上方に向かって開き気味に伸び、メスは左右の角が平行に伸びる[5]

分類

記載時にはヤギ亜科に分類されると考えられていたが、ウシ亜科に分類するという説もある[3]

1992年にブークアン保護区で角が発見され[4]、その後にベトナムとラオスの国境付近で標本が発見された[5]1996年にはメスの生体が捕獲された[4][5]2010年8月にも生体が捕獲され、ラオス政府が専門家を組織し、現地に派遣したが到着前に死亡した。

生態

山地の斜面にある常緑樹林や半落葉樹林に生息する[4]。夏季は標高2,000メートル前後の場所に生息するが[4]、冬季になると標高200メートルまで移動する[5]。野生下では夜行性と考えられているが、飼育下では主に昼間に活動していたという報告例もある[4]。単独で生活するが、2-3、6-7頭の群れを形成する事もある[5]。外敵に襲われると水場に入り角を外敵に向けたまま静止する[5]

歯の形状から木のを食べると考えられているが、を食べた目撃例もある[5]

繁殖様式は胎生。妊娠期間は約8か月と考えられている[4]。5 - 7月に1回に1頭の幼獣を産むと考えられている[5]。一方で生息地の猟師の報告例では2 - 3月に出産を行うとされる[4][5]

人間との関係

農地開発、森林伐採、道路・ダム建設による生息地の破壊および道路建設による狩猟や開発の増加、食用の狩猟などにより生息数は減少している[2][5]。研究用の乱獲も懸念されている[5]。ベトナムとラオスでは法的に保護の対象とされている[2]

2013年11月12日、世界自然保護基金(WWF)はベトナム山岳地帯の森林保護区で実に15年ぶりとなるサオラの生体写真の撮影に成功したと発表した。発表によると、WWFがベトナム政府と共同でアンナン山脈の山中に仕掛けた記録カメラが9月7日に捉えたという。ベトナムで野生のサオラが確認されたのは1998年が最後で、カメラによる記録も1999年に隣国ラオスで撮られて以来という[6][7]

参考文献

  1. ^ Appendices I, II and III<http://www.cites.org/>(accessed June 16, 2016)
  2. ^ a b c d e f Timmins, R.J., Robichaud, W.G., Long, B., Hedges, S., Steinmetz, R., Abramov, A., Do Tuoc & Mallon, D.P. 2008. Pseudoryx nghetinhensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T18597A8496459. doi:10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T18597A8496459.en, Downloaded on 16 June 2016.
  3. ^ a b c d Peter Grubb, "Pseudoryx,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, p. 695
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 石井信夫訳 「サオラ」『絶滅危惧動物百科6 サイ(スマトラサイ)―セジマミソサザイ』 財団法人自然環境研究センター監訳、朝倉書店、2008年、10-11頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 小原秀雄 「サオラ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、49、156頁。
  6. ^ 絶滅危惧種サオラ、ベトナムで15年ぶりに撮影 WWFフランス通信社(2013年11月14日7時26分発信)
  7. ^ 希少動物サオラ、15年ぶりに撮影 ベトナムCable News Network(2013年11月14日14時38分発信)

関連項目


サオラ

出典:『Wiktionary』 (2021/07/25 13:15 UTC 版)

語源

ベトナム語 sao la

名詞

  1. クジラ偶蹄目ウシ科サオラ属に属す鯨偶蹄類総称学名:Pseudoryx。
  2. 1.属す鯨偶蹄類一種学名:Pseudoryx nghetinhensis。

翻訳




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